プレゼント


ドアがノックされる音に、ユアンは目を覚ました。
本を読んでいるうちに眠ってしまっていたらしい。

ぼんやりする頭を振れば、ノックだけでなくインターフォンの音も聞こえて来た。


文字にするなら、こんな感じ


コンコン ピンポーン ピンポーン ピンポォォーン ガンッ

よくこんな騒音の中寝ていたな、と自分に感心しながら玄関へと足を進める。
無視をしてもよかったが、いかんせん後が怖い。ってゆーか、最後ドア蹴っただろ。




ドアを開けながら小言を一つ

「少しはご近所迷惑も考えろ」

「「あ・・・」」

何?と思うまでもなく、ユアンは身を持ってその意味を悟る。
あんまりにも出てこないユアンにイラっときたクラトスが、思い切りノックする(というかドアを壊す勢いでこぶしを振り上げた)軌道にユアンが顔を出したのだと。






「・・・・何か言う事は?」

おでこにでっかい絆創膏を貼ったユアンは、憮然とした態度で旧友とその息子を見つめた。
息子の方は"痛そうだなー"と同情を見せているからまだいいとして、問題は父親の方だ。

水槽の金魚を見つめ"これ病気だぞ"などと冷静に観察していないでほしい。
せめて、ごめんね?の一言があってもいいんじゃないだろうか。

そう言葉にすれば・・・

「ごめんね?」

全く感情のこもっていない、むしろ大根役者の方がいくぶんマシな謝罪を聞きユアンは侘びを要求した事を心から後悔した。




***




クラトスとロイドがユアンの家を訪れたのには理由がある。
ユアンが飼っている黒猫は、以前ロイドが拾った仔猫。その猫の様子を二人は見に来たのだ。

「うわっ、でっかくなったなお前ー!」

猫はロイドの事を覚えていたのか、嬉しそうに指にじゃれ付いている。

「手のひらに乗るくらいだった猫がこんなに大きくなるとは・・・」

クラトスも目を細めて、息子と猫がじゃれているのを見ている。
会社では絶対に見せないその暖かい表情に、ユアンは少しほっとしている自分に気付く。

ドアがへこむ位ノックされようが、むしろ自分の額がへこむ感じの攻撃を受けようが、背筋も凍る気持ち悪い侘びをいれられようが自分はこの友人に幸せで居て欲しいのだ。
そこまで考え、あれ なんか縁切った方がいいかもしれない と思ったのはユアンだけの秘密だ。

ロイドの指にじゃれていた猫が、ユアンを振り返ってニャアと鳴く。

「ああ、食事にするか?」

ニャア!と元気よく鳴く猫。どうやら幸せそうだ、と親子は目線を合わせ口元を綻ばせた。




「・・・・ユアン、それは何だ?」

「何ってあんぱんだ。クラトスはキムラヤのあんぱんが好きだからな」

「・・・・・・・・」

「・・・この猫、父さんの名前なのか?」

「クラトスから貰ったのだから、クラトスの名前を付けるだろう。ちなみにその水槽の金魚はスクイだ。金魚すくいで取ったからな」

「「・・・・・・」」

親子は絶句した。
いや、絶句するしかなかった。

真顔で恐ろしいネーミングセンスを披露する男と
これが普通とばかりにもしゃもしゃとあんぱんを食べる猫を見てしまったのだから。







翌日クラトスは一冊の本をユアンに渡した。

タイトルは勿論、【猫の飼い方】








end




11000hitキリリクにて凪猫あね様に書いて頂きました。 ちなみにこのお話は現代パロとなっております。でもってクラトスさん会社員て事で。 どうしても私がリクするとユアンを奇人扱いで、という事になってしまいます(汗)
あね様有難うございました!