クラトスセールス隊が行く

 暴走ユグドラシルを止める為に旅を続けていたクラトス達は宿屋で散財したおかげで無一文になってしまった。そこで金を稼ぐ為にクラトスセールス隊を結成。
 これは愛と正義の為に果敢に商品を売りまくるセールスマン達の物語である。(何じゃそりゃ?)
 ちなみにゼロスとクラトスが当然のように二人揃ってパーティにいますが気にしないで下さい。





【先鋒 リフィル】

 とある家の前にやってきたクラトスセールス隊。
「よしリフィル、お前が一番手だ。」
「任せろ!フフフ、容赦はせん!」
 リフィルは遺跡モード全開ではりきって玄関へ向かうと呼び鈴を鳴らした。
 中からおばさんが姿を現す。
「どなた?」

 物陰からすかさず指令を飛ばすクラトス。
「一気に切り崩せ!」

 リフィルは満面に笑みを浮かべると、指令通りに一気に畳み掛けようとしたのだが…。
「私はクラトスセールス隊の者だが、今日は今評判の古代遺跡から発掘した埴輪を格安の値段で提供…」
「まあ!なんて綺麗なお譲さんなんでしょう!!」
 大袈裟に両手を広げ、リフィルの口上に割って入ってくるおばさん。
「え?」
 リフィルの動きが止まる。同時にモードが正常へと切り替わり、照れ臭そうに頬に手を当てると、
「あらいやだわ。『綺麗なお譲さん』だなんて、そんな本当の事を…。」
「でも残念ねぇ。ちょっとだけお肌が荒れ気味。」
「!!……そ、そう?最近仕事が忙しいからかしら…。」
「それはいけないわねぇ。仕事も大切だけど、やはりお肌にも気を配ってあげないと。でも大丈夫よ。とってもいい化粧品があるの!さ、お入りになって。」

 1時間後、紙袋一杯の化粧道具を抱えたリフィルが出てきた。

「お前が買ってどうする!!」
「ご、ごめんなさい。つい…」
 クラトスはチッと舌打ちをすると、
「やはりお前も女だったという事か…。」
 この一言にリフィルは再び遺跡モードに切り替わる。
「それじゃあ今まで何だと思っていたんだ!」
「ええと……鬼?」
 リフィルに蹴り飛ばされ空の彼方へと消えて行くクラトス。
 落下点はヘイムダールだった。上半身を地面にめり込ませたその姿は、まるで『犬神家の一族』のワンシーンのようで…。
 クラトスは、「何をしとるんじゃ、お前は?」と目を丸くしている長老を余所にようやく頭を引っこ抜くと、天にこぶしを掲げ固く再起を誓うのであった。
「使命を果たすまでは死なぬ!」

 先鋒リフィルあえなく敗退…。
 だがまだ戦いは始まったばかり。頑張れ、クラトスセールス隊!



【次鋒 ロイド】

「よし。今度はあの家にしよう。ロイド、お前の出番だ!」
「よぉし、行くぜ!!」
 やる気満々で玄関へ向かうロイド。
 出てきたのは超メタボなおっさんだった。

(げっ、でかっ!!)

「何か用?」
「えっ?い、いや、洋服を買ってもらおうと思ったんだけど……」
 言い淀むロイド。
 実はロイドはS・M・Lの3サイズしか持って来ていなかったのだ。どう見てもこのおっさんでは最大サイズのLでも入りそうにない。
 仕方なく曖昧な笑みを浮かべると、背後の物陰から様子をうかがっているクラトスに指示をあおぐ。
 ところが飛んできた指令は…

「大きさだけが服ではないぞ!」

「……」
 この見当違いの指令にロイドは固まってしまった。
 確かに種類は豊富に用意してきているが、着られなくては意味がないではないか。
「ねえ、どうしたの?ちょうど服が欲しかったんだ。早く見せてよ。」
「え?……あ、ええと…」
 迫りくる巨体におののき、後退るロイド。そして次の瞬間、踵を返し走りだしていた。
「ごめんなさい!出直してきます。」
「あ!ちょっと待って!」
 慌てて止めようとするが、もうロイドの姿は消えており……超メタボなおっさんは、残念そうに溜め息をつくと家の中に戻っていったのだった。

「くっ、仕入れを誤ったか…。」(←無一文なので付けで仕入れた)

 悔しげなクラトスを前に、心の中で呟くロイド。
(頼りねえ指揮官…)

 次鋒ロイド、提供できる商品がなく不戦敗。
 負け続きのクラトスセールス隊。
 果たして勝機を見出す事ができるのか?



【中堅 リーガル】

「今度は貴公の番だ。セールスならお手の物だろう。」
「うむ。任せておけ。」
 クラトスの期待を背負い玄関の前に立つリーガル。
「ご免!どなたかおられぬか!」
 出てきたのは赤ん坊をおんぶした肝っ玉母さんだった。
「何、あんた?」
 ジロジロとリーガルを眺める肝っ玉母さん。その目が手枷に止まる。
「もしかしてムショ帰りの押し売りかい?」
「い、いや、これはそうではなくて…」
 なんとか手枷から意識を逸らせる方法はないものかと必死に思案するリーガル。

(よし。『将を射んと欲すればまず馬を射よ』だ。)

 リーガルは鞄の中からがらがらを取り出すと赤ちゃんの前で振ってみせた。
「ほ〜ら、ほ〜ら、がらがらでちゅよ〜。」
 キャッキャッと喜ぶ赤ちゃん。
「なんだい、あんた。おもちゃの行商をしているのかい?だったらそれを早くお言い。おもちゃなら買ってあげない事もないよ。」
「本当ですか!」
「ああ。ムショ帰りの若者の社会復帰を応援するのも市民の義務だからね。」

(だからムショ帰りではないと…)

 リーガルの心の嘆きなど知る由もなく、家の中に向かって大声で叫ぶ肝っ玉母さん。
「さあみんな出ておいで!おもちゃを買ってやるよ。」
「わ〜い!おもちゃ〜〜!!」
 肝っ玉母さんの号令に家の中から次々に子供達が飛び出してくる。その数、15人。
 目を見開くリーガル。
「こ、これ程とは!」
 いくらなんでもこんな大人数に行き渡る程の品数は揃えてきていない。
「どうしたんだい?早くおもちゃを出しておくれ。子供達に選ばせるから。」
「ええと…その…」
 困ったリーガルは背後のクラトスに指示をあおぐ。
 すると…

「数に惑わされるな!」

(いやそうではなくて、需要と供給のバランスが…)

 指をくわえて見上げてくる子供達を前に、リーガルはもう半泣き状態だった。
 しかし泣いたところで急におもちゃが湧き出てくれる筈もなく、司令塔が役に立たない以上、この場は自分で切り抜けるしかない。
 リーガルはカタログを取り出すと、
「す、すまないが、今回は予約注文という事で…。」
 我ながら間抜けな受け答えだとは思うが、この際仕方がない。
 案の定、眉をひそめる肝っ玉母さん。
「なんだい、今すぐ手に入らないのかい?」
「ええ。うちはおもちゃの場合受注してから作る主義なんですよ。あ、でも他の物ならすぐにご用意できますが…。」
「変な押し売りだねぇ。…ん、ちょっと待てよ。他の物なら?……!!さてはあんた、巷で噂の、おもちゃで釣っておいてもっと高額な物を買わせるという悪徳セールスマンだね!」
「はい?(そんな噂、聞いた事がないが…)い、いや、違う私はそんな怪しい者では…」
「その手枷からして十分怪しいじゃないか!どうもおかしいと思っていたんだ。一郎、警察に電話おし!!それまであたしが押さえとくから。」
「がってんだ、母ちゃん!」
「待ってくれ、本当に違うんだ!!」
 分が悪いと見たリーガルは慌てて逃げ出そうとするが、肝っ玉母さんの馬鹿力に取り押さえられてしまい、数分後にやって来た警官に連行されてしまったのだった。

 その様子を物陰から眺めていたクラトス。(←黙って見ていたのか?)
「ムムム…。頼みの綱であったリーガル殿が戻るべき場所に戻って行ってしまうとは。」
「戻るべき場所って……あのさ、父さん。リーガルは別に脱獄犯じゃないから。」
「くっそ〜、これで0勝3敗か!!」

 中堅リーガルがお縄となり、残るは副将と大将のみ。
 すっかり追い詰められてしまったクラトスセールス隊…。
 だがまだ勝負がついたわけではない。(何の勝負?)
 頑張れ!不死鳥のごとく甦るのだ!!



【副将 ゼロス】

 次のターゲットへとやってきたクラトスセールス隊。
「次はお前だ、ゼロス。」
「任せなさい!俺様が一挙に挽回してやるぜ!!」
 ぽんと胸を叩き、玄関へ向かうゼロス。その途中車庫に停めてある黒のベンツを見て、これはいい鴨だ(?)とほくそ笑む。
「ごめんくださ〜い。」
 しばらくしてサングラスをしたスキンヘッドの男が出てくる。
 その途端ゼロスは凍りついた。
 然もあらん。その男、顔には刃物によって付けられたような傷があり、よく見れば小指を詰めているのだ。これはどう見てもその筋のお方。しかも背広から僅かに黒光りするものが顔を覗かせていた。

(そう言えば門のところに『□△会系 ※※組』と出ていたような気が…。)

「何だ、お前?」
 男のドスのきいた声にパニック状態に陥るゼロス。
「え?…あ、ああ…。あの俺様…いえ、僕はセールスマンでして、本日は防犯グッズのご紹介に…
「あん、なんだって?聞こえねえぞ。」
「いや、だから…」

(俺様、ピ〜ンチッ!)
 涙目で背後のクラトスに指示をあおぐも、返ってきた答えは…。

「危険な敵だが、止むを得まい。」

「!!……無理!無理!絶対無理〜〜!」
 ゼロスは泣き叫びながら猛スピードで撤退したのだった。

「何をしている。敵前逃亡だぞ!!」
「そんな事言ったって、俺様まだ死にたくないし。」
「安心しろ。殉職者には二階級特進を用意してある。」
「いらねえよ!そんなもん!!」
 怒り心頭に向こうへ行ってしまったゼロスを見送り、舌打ちするクラトス。
「まったく……役に立たんやつだ。」

 副将ゼロス、敵前逃亡にて不戦敗。残るは大将のみとなってしまった。
「フ…。私が最後の砦というわけか。ここはひとつ、セールスとはなんたるかを見せてやらねばならんな。」
 クラトスは青空を見上げ、逆転勝利を固く誓うのだった。



【大将 クラトス】

 クラトスセールス隊が次に向かったのはシルヴァラントベースであった。
 その扉の前に立つと、近くに落ちていた丸太でドンドンと突くクラトス。
 すぐにユアンが出てきた。
「貴様!基地を壊す気か!!」
「いやなに、手で叩くと痛そうだったから。」
「…………で、何の用だ。ミトスはもう倒したのか?」
「いや、今の私はクラトスセールス隊隊長だ。」
「はあ?」
「今日はお前の為に特別にエコ商品を用意してきたのだ。有難く思え。」
 そう言ってクラトスは頭陀袋から次々に商品を取り出していく。
「これはさっきそこで拾った穴のあいた鍋だろう。そしてこれは破けたゴミ袋。水を切るのに便利だぞ。で、こっちは飲みかけのペットボトルにフィラメントが切れた電球。これらに先程扉を突いた丸太をおまけにつけて、1万ガルドでどうだ?」
「おお、そうかそうか。それはまたお得だな♪…………なんて言うと思ったか!ふざけるな!!だいたいそれのどこがエコ商品なんだ?いらんわ、そんなもん。」
「そうか…。」
 ユアンの返答にさっさと品物をしまい始めるクラトス。
「おい待て。それでおしまいか?」
「だっていらんのだろう?」
「それはそうなのだが……お前、よくそんなのでセールスマンと名乗っているな。もっと粘らなければ商売にならんだろうが。」
「いや、いいのだ。お前のところへ来たのがそもそもの間違いだった事に気付いた。よくよく考えてみれば、お前に1万ガルドなんて大金、払えるわけがないものな。」
 ムッとするユアン。
 もしここにボータがいたら、もちろん止めていたに違いない。だがこの時すでにボータはこの世になく…。
 唯一の歯止め役を失っていたユアンは、気が付くと怒りにまかせてこう叫んでいたのであった。
「よし、その品、買った!!」

 それから1時間後。ほくほく顔のクラトスセールス隊の姿があった。
「これだけあれば当分の間、旅費に困る事はないだろう。」
「ユアンに目を付けるとはさすがクラトスね。おかげで新しいデータがとれたわ。」
「しかしホント、ユアンて乗せやすいよな。」
「ドジっ子だからね。仕方ないっしょ。」

「「「「ハハハハハ…」」」」

 こうしてクラトスセールス隊はめでたく勝利をつかむ事ができた。
 だがこれで終わったわけではない。
 再び旅費が尽きた時、彼らはまた現れるだろう。
 愛と正義を武器に世界中に幸せを届ける為に。


− おしまい −




「黄昏のひとりごと」のたむら様への誕生日プレゼント。
最近私事でバタバタしている為ご無沙汰していたもので、そのお詫びもかねてお贈りしました。
でも即興で書いたものなので「なんじゃこれ?」な内容になってしまいましたが…。(だったら贈るなよ!)
毎度のことですが、やはり最後のオチはユアンとなっています。
ホント、ユアンて愛すべき人ですね。
彼は私にとっていい鴨です。(笑)

改めまして、誕生日おめでとうございます。
今後とも、よしふみの活躍を心よりお祈りしております。






目次へ戻る