日頃の不満爆発!?


「なんだよ、そんな言い方する事ないだろう!!」
 思わず声を荒げるロイド。
「冷静になろうよ、ロイド。僕は本当の事を言っただけだよ。」
 冷静に言い返すジーニアス。
「だいたいロイドは注意力がなさすぎるよ。」

 ここは森の中。
 最終決戦に向け少しでもレベルアップをしようと修行にやって来たロイド一行。
 今日のところはこの辺でキャンプをしようということになった。
 しいなは薬草採りに、クラトスは薪を拾いに出ており、現在ここにいるのはロイド、ジーニアス、ゼロス、コレット、リフィル、プレセア、リーガルの7人であった。
「注意力がない、って言ったな?その言葉そのままお前にかえすぜ。ジーニアス。」
「どういうこと? 僕はちゃんとしているよ。ロイドよりははるかにね。」
「へへぇーん。」
 ロイドは人差し指を立てて左右に振る。
「甘いね、ジーニアス君。」
「な、なんだよ。」
「お前、戦闘の時さ、いっつも効果の無い魔法ばかり使ってるじゃんか。今日だって飛んでる敵にタイダルウェイブやレイジングミストばっかり唱えてさ。全然あたってないっちゅーの。ああ、そういえばお前『学習しない』て称号獲得してたよな。」
「そ、それなら、言わせてもらうけど、ロイドだって裂空斬とか真空裂斬とかクルクル回っているだけで、全然当たってないじゃないか。 それに空中にいる敵に魔人剣なんてやっているし。クラトスさんがイライラしていたの分かってる?」
「ク、クラトスは関係ないだろ!」
「ちょっち、まった〜! ロイド君も、がきんちょも、自分の恥さらすだけでみっともないからやめなさいってーの。」
 益々加熱しそうな二人にゼロスが割って入った。
「ゼロス…人の事いえるの?」
 ジーニアスがじと目でゼロスを見る。
「ゼロスって無駄な動きが多いよね。変にくるくるしていてさ、後で見ていて馬鹿じゃないかって時々思うよ。」
「言ってくれるじゃねえか、がきんちょ!俺様の華麗な舞にケチつけるたぁ上等だぜ!!」
 ゼロスあっさりと参戦。
「だいたいお前邪魔なんだよ。魔物が集まっている所にわざわざやってきて術の詠唱始めてよ。『邪魔しないでよ』はないでしょーが。誰だって邪魔するっしょ、あんなトコ突っ立ってたらよ。それに魔物引き連れてこっち来るのやめてくんない?そっちは俺様盾にして安全だろうけど俺様はボコボコにされちまうわけよ。」
「あ、それ、俺もいつも思ってる!! 前衛の俺達にしたらえらい迷惑だよな。」
 ロイドは妙に納得したように頷いている。
「お前達やめないか。仲間割れなどしている時ではないだろう。」
 今度はリーガルが止めに入った。
「あんたもだぜ、おっさん。」
 今度は矛先がリーガルへと向く。
「あんたいつも面倒な敵を人に押し付けて逃げ回ってばかりだろう。攻撃は空振りばっかだし、『術などやらせるな』とかえらそうに命令してるくせに当の本人はその術を詠唱してる敵の真ん前で突っ立ってるだけだし。」
「そう、そう、そう。」
 なぜかロイドがゼロスの援護に回る。
「『とぉー』とか言いながら空振りしちゃあ逃げていっちゃってさ。逃げ損なってボコボコにされたら『む、できるっ。』だぜ。敵の強さに感心してる暇があったら攻撃当てろよな。あんた結局なんもしてないんだもんな。」
「いや、たまにやってるぜ、ロイド君。人が散々苦労して敵さん弱らせた所になぜか割り込んできてちょいと足出してとどめだけさしてる。」
「そういやあ、そうだな。汚ねえよな。そういう時だけ攻撃当てるんだもんな。まさに大企業の中小企業いじめ、て感じだよ。さっすが自分の会社を大企業にまで伸し上げた会長さん!戦闘中にモンスターに対しては頭使わねえのに、自分が止めをさそうとする時だけはフル回転させんのな。」
「決めのセリフが言いたいんでしょうよ。『勝負にならなかったな!』 とか 『許せよ。死ぬわけにはいかんのでな』とかよ。」
 リーガルの顔色が微妙に変わる。
 すると、そこへ…
「仕方ないよ〜二人とも。きっとリーガルさんて頭の中まで筋肉なんだよ。『けし飛べー』とか言って自分がけし飛ばされちゃっている位だもん。」

 コ、コ、コレット?お前そこまで言うか?
 俺達はこれでも少しは遠慮してるんだぞ…

「…神子…」 
 リーガルの声が少々震えている。
「そなたに其処まで言われる筋合いはない…」
「え〜。だって、ほんとの事だよ〜。」
「ならば言わせてもらおう。そなたはもっと真剣に戦ってもらいたいのだがな。『失敗しちゃった〜』などと間の抜けた声を聞くとこちらまで力がぬけてしまう。」

 …リーガル、あんたの声で『失敗しちゃった〜』とか言わないでくれ。
 悪寒がはしる。

「ひっど〜い。リーガルさんみたいに、すかす事だけに命掛けてる使えない男の代表格の筋肉馬鹿に言われたくな〜い。」

 いや、コレット…おまえも十分ひどい事いってるから……。

「き…筋肉馬鹿だとぉー。そなたこそ頭の中を一度調べた方がよいのではないか?敵のいない所で『レンジウィングル!』とか叫びながらクルクルまわったり、ピコレインを降らせたり。挙句の果てに『わたしばっかり〜』などと甘えた声を出す。戦闘は遊びではないのだぞ。そなたは脳みそも天使化して羽が生え何処かへ飛んでいってしまったのではないか!!」

 リ…リーガル…?

「おやめなさい、あなたたち。」
 ついにリフィル登場!
「先程から聞いていれば、自分の未熟さを棚に上げて他人の中傷ばかり。それは人の道に外れた行為です。おやめなさい!」
 それからリフィルはリーガルを見て
「貴方まで一緒になって何をやっているの。大人げなくてよ。子供達が言った悪口などさらりと受け流していればいいんです。」
 リーガルは返す言葉もなく俯いた。
「貴方達少しはクラトスでも見習ったらどうなの?彼はボロボロの状態で何とか勝利できた時『我が剣、まだ未熟ということか…』と誰も責めずに自分の未熟さを反省しているじゃないの。」
 それを聞いたロイドはこっそりとジーニアスに耳打ちする。
「おい、先生、目がハート型になってねえか?もしかしてクラトスに気があるとか?」
「別の意味でだと思うよ。 …ほら、クラトスさん4000年生きているから誰も知らない歴史を知っているって事でしょ。それに古代英雄で天使だし。姉さんの目には生きた遺跡に見えるんじゃないかな。」
「クラトスは遺跡じゃねえぞ。」
「分かってるけど、姉さんの頭の中は時々常識じゃはかれない動きをするから。」
 こそこそと話している二人に不意打ちのリフィルの回し蹴りがヒットした。二人はあっけなく吹っ飛ばされる。
「良くって?こんな馬鹿らしい揉め事はもう終わりです!!今度こんなくだらない事始めたらただではおかなくてよ。」
 リフィルは喧嘩に強制的にピリオドを打つと、この件はもうおしまいとばかりにその場を離れようと背を向けた。
 そんな彼女に命知らずの天然天使が声をかけた。
「でも〜先生も戦闘中、人の道に外れた事やってますよね〜」
 リフィルはその声にゆっくりと振り向いた。
「それはどういう意味かしら? コレット。」
 その顔には天使のような微笑が貼り付けられている。かなり危険な状況だ。
 ロイドやジーニアスはこの微笑を堕天使の微笑みと呼んでいる。
 この微笑浮かぶ時、大地は裂け雷鳴が轟き、嵐がやってくる。そして奈落の底へと引きずり込まれるのである。

 いつの間にか復活したロイドがやめるように合図を送る。
 しかしコレットはほんわかとした表情で後を続けた。
「だって〜先生、『援護してくれ』て作戦の時、自分にバリアとかシャープネスとかかけるばっかりで肝心の前衛はほとんど後回しにしてるじゃないですか〜。自分自身にするのって援護っていうんでしたっけ〜?」
「よくぞ言ってくれました、コレットちゃん!!」
 再びゼロス登場。勢いづくコレット。
「それから〜、自分自身にディスペルかけた時、なぜか自分で自分に『有難う』ってお礼いってるんですよね〜。確かに感謝の心は大切ですけど、自分にっていうのはどうなんだろう?」
「『私はこんなに素晴らしい事ができるのよ』って自慢したいんじゃないの。自画自賛してアピールしてんのよ。」
「回復にしたって、後方にいる自分やジーニアスにはすぐにキュアやヒールをかけるくせに、前衛でボコボコにされている人にはファーストエイドばっかし。たま〜にヒールとかかけてるみたいですけど、ほとんどはファーストエイドの後にリバイブなんですよね〜」
「そうそう、『死の誘いより彼の者を守れ』って、お経みたいに繰り返すばっかりで全然回復してくんねえの。これって『お前は一度死ね』って言ってるようなもんでしょーが。俺様かなし〜ぃ。」
「それで結局戦闘不能になっちゃうと、『私の力が至らなかったわ』とか言っちゃって反省する自分に酔っちゃってるんですよね〜」
 リフィルの頭上に暗雲がたち込め始める。

 お前達、その辺でやめておけ。
 本当に死の誘いに引き渡されるぞ!!

 ロイドの心の声は届かず、二人はますます調子に乗る。
「それから〜リフィル先生って、ジーニアスと同じでわざわざ敵の群れている所まで来て術唱え始めるんですよね〜。」
「そうそう!真ん前にきてなんだか知らねえけどしばらく眺めてるんだよな。そんで攻撃されると『無駄よ』とか言って少し下がって唱え始める。あの眺めている間って何?俺様からしてみれば早く回復して欲しいんですけど。」
「モンスター図鑑作成の為じゃないですか〜。それに〜下がって詠唱始めればまだいいですけど〜ひどい時は敵の目の前でそのまま唱え始めるじゃないですか〜。それで邪魔されると『邪魔をしないで』とか言っちゃって。それで下がる時もあるけどほとんどその場でまた詠唱始めるんですよね〜」
「そうそう、それでぼかぼかやられると『計算外よ』て言うんだよな。どんな計算したら敵の真ん前でそのまま詠唱って答えがでるのか知らねえけど、方程式まちがってんじゃねえの。」
「……あなた達? さっきから言いたい放題言っているけど、こちらにだって言い分はあるのよ。」

 あれ?リフィル先生。さっきはリーガルに大人げないっていってなかったっけ?

「私が回復しようと詠唱を始めているのにあなた達全くカバーしようとしていないじゃないの。ロイドやリーガルなんて私たちの方へ敵をすっ飛ばしてあとは知らん振り。別の敵の方へいってしまうじゃないの。術が遅れても仕方がないのではなくて?それにあなた達やる気があるのかないのか、攻撃がほとんど当たってないじゃない。それで逆にボコボコにされて、何度回復してもその繰り返し。これではたまったものではないわ。」
「その言い方はないでしょーよ。あんたたち術者は俺様達に守られるのが当たり前と思っているようだけど、まあ、ある意味それは正論だけどね。でも、時と場合によるでしょ。あんた達は敵さんから離れて、詠唱するのに安全な場所を確保するために俺様達の方へ来るのかもしれねえけど、こっちに人が集まれば自動的に敵さんもこっちにやってくる訳よ。仕舞には囲まれちまう。盾になるにも限度があるんだぜ。その間、回復もしてもらえねえ、術の援護もねえじゃ、体張ってやってる俺様達、前衛はどうなるのよ。」

「体張ってるなんて笑っちゃうね。」
 ジーニアスが口を挟んできた。
「そんな事言う割には、リーガルなんて詠唱中の僕の後に回り込んできて僕の事盾にしてさ。僕がやられても知らん振りしてるじゃん。敵が術の詠唱始めても防ごうともしないんだよ。空中の敵の時なんか、たまーに出てきても『せっ、せっ』ってかけ声だけで全然あたってないし。それで、攻撃されたら『む、油断した。』ってそれの繰り返し。油断してばっかりじゃん。あてる気がないなら『せっ、せっ』なんて言わないで欲しいよ。今に僕、『せっ、せっ』やってる後ろで『せっ、せっ、せっ〜のよい、よい、よい』って歌い始めちゃうよ。」
 ジーニアスの言葉に、リーガルの表情が強張る。
「仕方がないんだよ、ジーニアス。」
 再び天使(悪魔?)コレット登場。
「リーガルさんは足が短いから、空中の敵には攻撃が届かないんだよ。でも一応、守ってます、ってトコ見せないと立場がないから形だけ攻撃してすぐに逃げてきちゃうんだよ。」
 リーガルの顔が信号のように青くなったり赤くなったりしている。
「ついでだから言わせてもらいますね〜。リーガルさんの『治癒功』ってほとんど役に立たないですよね〜。離れたところでやるもんだから、HP1ポイントしか回復しなくて。こっちも目の前の相手と戦っている最中だからへたにリーガルさんの近くまで戻るわけにもいかなくて。それでも必死こいて、『無理をするものではない』とか言いながら何度も何度も無駄な努力してるんですよね〜。そんな事している暇があったら役立たずでもいいから戦闘に参加して欲しいんですけど〜。」

 コ、コレット…
 お前、もしかしてリーガルが嫌いだったのか?

 案の定、リーガルは真っ赤になり怒りが爆発した。
「き、き、貴様のような、犬に名前を付けるしか能の無いバカ女にそこまで言われたくはないわ!!」
 リーガルは手枷のついた両腕をジャラジャラと音を立てながら振り上げる。
「落ち着け!リーガル!!」
 ロイドは慌ててリーガルを羽交い絞めにするが、彼の馬鹿力によってあっけなく振り払われる。
「へーんだ!!本当の事言われて怒る事ないじゃ〜ん。」
 コレットは羽を出して空中へと逃げる。

 おい、コレット。お前、完全にキャラ違ってるぞ。

「とぉーっ!」
 リーガルは華麗なジャンプをするとコレットに蹴りを入れた。
「きゃ〜!!!」
 コレットは地面に墜落して尻餅をついた。
「もう、怒ったよ〜!!」

 かくして、天使V.S格闘家の不毛な戦いが始まった。

「リミュエレイヤー!!」
「牙狼連濤打!」
「やらせないから!…え〜い!!!ピコ、ブランディス、グランシャリオ!!」
「くっ…せっ、せっ、せっ、三散華、飛燕連脚、三華猛蹴脚、けしとべー」

「や、やめろよ、二人とも!」
 ロイドは必死に止めようとするが、なかなか間に割って入れない。
「元はといえば、ロイドがいけないんじゃないか。」
 ジーニアスの言葉にロイドは勢いよく振り返った。
「なんだよ。全部俺のせいかよ。だいたいお前が変な口挟んでくるからだろう!」
「変なとはなにさ!僕はロイドの事を考えて…」
「よけいなお世話なんだよ。」
「!…ふ〜ん。僕の術で消し去られたいわけ?」
「お前こそ、俺の刀の糞にしてやるぜ!!」
「…刀の錆び、だよ、ロイド。『さ・び』!…もっと勉強した方がいいんじゃない。」
「う、うるせー!とっとと、かかってきやがれ!!」

 こうしてここでも剣士V.S魔術師の戦いが始まった。

「ちょっ、ちょっ、待ちなさいって。そんなにヒートアップするこたぁないでしょうが。」
 ゼロスは慌ててリフィルを振り返る。
「そんなトコで傍観してないで止めた方がいいんじゃないの?」
「無駄よ。夫婦喧嘩は犬も食わないってね。へたに止めたりしたらこっちが大怪我するわ。」
「…夫婦喧嘩じゃないっしょ?」
「ならあなたが止めなさい。」
「あんたね〜、それでも先生なわけ!?」
「あなたは、神子よね。神子は、みんなの為に働くのが仕事ではないの?」
「!!……仏の顔も三度って言葉知らないの?俺様本気で怒っちゃうよ。」
「もちろん、存じ上げてますわ、これでも教師ですから。でも、あなたは仏様ではないでしょう。女と見れば見境の無いただのアホ神子よね。」
「くぉ〜の〜!人が下手にでてりゃ、いい気になりやがって。俺様の本気をみせてやるよ!!」
「面白い!貴様の本気とやら見せてもらおうじゃないか!!」
 リフィル、遺跡モードに切り替わる。
 一方ゼロスも普段のおちゃらけた態度は影をひそめ、戦士の顔に変わっている。

 ついにここにも、神子V.S教師の戦闘が火蓋を切って落とされたのだった。


 ここに、この不毛な出来事に、さきほどから参加していない者、1名。
 プレセアはその無表情な瞳に、わずかながら呆れたような色を浮かべ、6人の馬鹿らしい戦いをながめていた。




 口喧嘩から戦闘を交えた大喧嘩へと発展してしばらくして、しいなが薬草採りからもどってきた。
 その場の惨状に、ばさりと薬草を落とすとあんぐりと口を開けたまましばしの間 固まっていたが、すぐに我にかえると止めに入る。
「ちょっと。ロイド、ジーニアス、何やってんだい!…コレットとリーガルも止めなって。…リフィルまで何を……ほら、アホ神子も剣なんか振り回して危ないだろ!…仲間どうしで揉めてどうしたんだい!?みんな止めなさい!……って誰も聞いてないのかい!?」
「無駄です…しいなさん。」
 プレセアが、しいなが落とした薬草を拾いながら言った。
「でも、このまま放っておくわけにいかないだろう。こんな大切な時にケガでもしたらミトスどころじゃなくなるよ。」
 しいなは、果敢にも戦闘に割って入って止めようとするが、すぐにはじき飛ばされる。
「…っく!どうしたらいいんだい。」
「精霊を召喚してみたらどうでしょう……。」
「それもいいけど、まず皆ただじゃすまないだろうねぇ。大怪我しちまうよ。」
 どうやって止めようかと二人で悩んでいると、突然後方から水が降ってきた。
 1回、2回、3回と、もつれ合っている3組に容赦なく水がぶちまけられる。
「何しやがる!!!」
 全身びしょ濡れのロイドが振り返って怒鳴った。
 その先には…
「ク…ク…クラトス!?」
 足元に拾ってきた薪を置き、手にバケツを持ったクラトスが立っていた。
「…何をしているのか聞きたいのはこっちなのだがな。」
 いつものように低く落ち着きのある声。
 だが、その中に静かな怒りが含まれているのがはっきりと感じ取れた。
「…リーガル。貴公まで一緒になって、何をやっているのだ。…リフィル、お前もだ!」

「す…すまない…」
「…ごめんなさい…」

クラトスはため息をつくとバケツを置き、腕を組みロイドを見た。
「で?」
「へ?…『で?』って?」
「どうしてこんな事になったのか、と聞いているのだ。そもそもの原因は何だ?」
「原因?原因ねぇ…」
 ロイドは首をひねって考え込む。
「なんだっけ?」
 クラトスは頭を抱えた。
「私に聞いてどうする。私がお前に聞いているんだ。」
「忘れちまったよ。なんだかひどくムカついた事だけは覚えてるけど…」

 息子のこのさっぱりとした性格を喜ぶべきか、悲しむべきか…

 父親クラトスが一人頭を悩ませていると…
「…ロイドさんの…どら焼きがなくなったんです…」
「!?…どら焼き?」
 声のほうへ振り向くとプレセアが立っていた。
「…以前、ミズホの里で…いただいた物です。」
「そういえば、そんなことあったねぇ。クラトスもいたんじゃなかったかい。」
「…ああ…」

「そうだ!!!!」 
ロイドが突然大声を出す。
「俺のどら焼き〜。あんとき2個づつもらってさ。あまりにもうまかったから、1個取っておいたんだ。あとで食べようと思ってさ。それが、なくなっちまったんだよー!!!」
 ロイドは一同を睨みつけた。
「犯人はこの中にいる!!…誰だっ!俺のどら焼き食った奴は!正直に名乗り出ろ!」

「…喧嘩の前にもロイドさんは…私たちにそう言ったんです。そうしたら、ジーニアスが『ロイドが自分で食べたのを忘れているだけじゃない?』って言ったんです。そして冒頭の『なんだよ、そんな言い方する事ないだろう!!』に戻る訳です。……あとは売り言葉に買い言葉。大喧嘩になりました。」
「そうだよ、俺が真剣にどこにいっちまったか悩んでいるのにジーニアスが……!?……」
 ロイドは妙に重たい空気を感じ、恐る恐る振り向いた。
 そこには、どす黒い怒りのオーラを背負った、クラトスが…。
「…つまりは、どら焼き1個のためにあれ程の大事になったというわけか?」

「ク、ク、クラトス…で、でもさ、俺にとっては一大事な訳で…」

「…しかも、誰一人として止めようとしなかった…と?」

「ぼ、ぼ、僕はロイドを諌めようとして…」
「お、俺様は止めたぜ。」
「わ…私も…一応、止めたのだが…」
「わたしは、おもしろそ〜だから、煽っちゃったぁ〜」
「わ、私も教師として諭したわ。」
 若干1名を除く全員が苦し紛れの言い訳をしながらその場から逃げようとする。

「だが、結局、一緒になって喧嘩に加わっていれば同じ事だろうが〜!!!!!!」

 こうして、その場にいた、しいなとプレセアを除く全員に裁きの光が降り注いだのだった。




「結局さ、俺のどら焼きはどうなったんだ?」
「まだ言っているのかお前は。」
「だって〜、俺楽しみにしていたんだぜ。」
「ミズホに行ってからどれ位たったと思っているのだ。」
「へ?……10日ちょっとってトコだろ?」
「あの時、しいなが言ったはずだ。少しおいた物だから早めに食べた方がいい、とな。」
「…聞いてなかった。」
「…だから、人の話はよく聞けといっているのだ。この暑い気候で10日以上置いておけばどうなるか、想像できんのか!?」

「…つまり…」
「私が、調理当番の時、カビ始めたどら焼きがあったから捨てた。」

 ロイドは大きく目を見開いた。やがてそこから大粒の涙がこぼれおちる。

「ひ、ひでぇ…」
「腹をこわすよりマシだろうが。」
「ちょっと位腐ってたって、俺平気なのにー!!!」
 ロイドは大声で泣き始めた。
「そ、そうなのか?」
「そんなもん、しょっちゅう食ってた〜。」
 さらに泣き声が大きくなる。

 ど…どういう物を食していたのだ、お前は。
 …ダイク殿、一体どういう育て方を?

 更に更に大きくなる泣き声に閉口して、クラトスは羽を出しミズホまでどら焼きを買いに行きましたとさ。


−日頃の不満爆発!? 終−