モモ肉はお好き?


 世界を救うべく旅を続けているロイド一行。
 時たま現れるモンスターを倒しながらテクテクと進んでいると、やがて大きな川に差し掛かった。
「結構川幅が広いな。」
 ロイドが眉を顰めそう言うと、リーガルも、
「それに流れも速いし深そうだ。我々なら兎も角、女子達にはちと難儀であろう。」
「水の嫌いな先生もいるしな…。どうしようっか?」
 するとそんな二人に、ゼロスがニヤリと笑ってこう言ったのだった。
「知ってる?昔はこう言う川には旅人を肩車して向こう岸へと渡してくれる人足がいたそうだぜ。」

(えっ、肩車!?)

 ゼロスの言葉に、約一名を除く男性陣全員の目がきらりと光る。
「そ、そ、それ、いいなあ。」
「ロイド…声が上擦ってるよ。」
「煩せえぞ、ジーニアス。よし!それしか方法がないようだし、男性陣が女性陣を渡してあげる事にしようぜ。」
 ロイドが元気良くそう宣言すると、男性陣も皆即座に頷いた。
「それじゃぁ、まず俺様が天使様を…」
 揉み手をしながらクラトスへ近付いて行くゼロス。
 クラトスは首を傾げた。
「私は男なのだが…?」
「だってさ、天使様はマナを放出して体が弱ってるっしょ?だから俺様が優しく肩車してあげるよ。」

「ちょっと待てっ!!」

 そこへ割り込んで来たのはロイドであった。
「父さんを運ぶのは息子である俺の使命だ!!」
「こんな時だけ親子を持ち出してくるなんて卑怯っしょ!」
「そうだよ!クラトスさんは僕が向こうへ渡してあげるんだからね。」
「いや、貴公らには無理だ。クラトス殿は私が…。」
 睨み合う四人。
 何しろ肩車と来れば、相手の太股を直に感じる事が出来るのだ。こんなに美味しい役を他人に渡す手はない。
 四人の間に火花が飛び散る。

 すると…
「皆の気持ちは有り難いのだが私なら大丈夫だ。ノイシュに乗せてもらってもいいし…。」

「「「「ノイシュ!?」」」」
 キッと振り向く四人。

「あんな犬コロじゃ頼りにならないっしょ。」
「うむ。それに濡れてしまっては可哀想だ。」
「しかし…どちらにせよノイシュも向こう岸に渡らねばなるまい?」
「駄目駄目〜!ノイシュなんて駄目だ!父さんは息子の俺よりノイシュを取るのか!?」
「え?…いや、別にそう言う訳では…」

(ノイシュなんかにこの役渡してなるものか!クラトスのフトモモは俺のものだ!!)

 再び火花を散らす四人。
 クラトスは溜め息を突いた。
 そんなクラトスにしいなとプレセアが言った。
「放っておきなよ、あんな嫌らしい連中。」
「…あの四人に下心がある確率100%…」
「下心?」
「なんだい、気付いていないのかい?お人好しも大概にしなよ。ま、いいや。コレットが向こうに橋を見付けたんだ。だから私達はそれを渡るとしよう。」
「え?橋?」
 目を丸くしているクラトスの腕を掴んで強引に引っ張っていくしいな。
 その後ではまだ四人によるクラトス争奪戦が繰り広げられていた。

「大体、ガキンチョにクラトスを肩車するなんて無理っしょ。」
「子供だからって馬鹿にしないでよね!」
「それを言うなら手枷野郎にも無理だな。なんたって両手が塞がっているんだから。」
「フ…手枷は外せばいい。」
「『我が罪、まだ償えてはいない』んじゃなかったのかよっ!!」
「フ…クラトス殿の為なら誓いを破る事も厭わぬ。」

「「汚ねえぞ、てめ〜!」」

 ロイドとゼロスの一撃を(珍しく)華麗に避けるリーガル。

「くっそ〜、父さん(の太股)は誰にも渡さねえ!」
「天使様(の太股)は俺のものなの!」
「違うよ!クラトスさん(の太股)は僕が…」
「フ…クラトス殿(の太股)は私がもらった!」
「何を言っている。クラトス(の太股)はやはり4000年来の友人である私が…」

「ねえ〜、なんか一人増えてるみたいだよ〜。」
「構わないから放っておきな。ほら、行くよ。」
「は〜〜い♪」

 目当てであるモモ肉…いやもとい、クラトスが女性陣によってとっくにこの場から連れ去られている事にも気付かずに、四人+一人による不毛な戦いはそれからしばらくの間続いたのであった。


−モモ肉はお好き? 終−