その日、ロイドとジーニアスとコレットの三人はイセリアの村を散歩していた。
 そこへ突然眩いばかりの光が…。

「お!聖堂の方に火柱が上がっているぞ!!」
「…ロイド、火柱じゃないよ。光の柱でしょ。火柱が上がったら聖堂が無くなっちゃうじゃん。」
「細かい事はいいんだよ!……そうか、いよいよ洗濯が干されるんだな。」
「……それを言うなら『神託が降りる』……」
「一々煩いんだよ、ジーニアス!!」
「ロイドが間違った事ばかり言うからでしょ!!」

 言い争いを始める二人。
 するとコレットが、

「私、行かなくちゃ…。」
「え?コレット行くのか?」
「だって私、神子だから。」
「…そうか。神子って仕事も大変だな。よし、俺達も手伝ってやるよ。」

(俺達?…もしかしてボクも行くの?)

 冷や汗を流すジーニアス。
 なんとか断ろうと画策するが…。

「本当?有難う、ロイド、ジーニアス!!」

 コレットに笑顔でそう言われては、如何にジーニアスとて断る事も出来ず…。
 こうして三人は仲良くお手々繋いで聖堂に向かったのであった。



 聖堂の前は何やらドッシンバッタンと騒がしかった。
 首を傾げる三人。
 するとそこへ祭司長がヨロヨロと現れた。
 それを見たロイドが悲しげな表情を浮かべ言う。

「駄目だ…もう、息がない。」

 祭司長は目を剥いた。

「まだ生きております!!」
「一体、何があったのですか?」
「おお、神子様。それが突然ディザイアンが現れたのです…。」

「「「!!!」」」

「ですが今日は大切な神託の日。神子様…大変でしょうが頑張って神託をお受け下さい……う、うう…バタッ」

 今度こそ本当に事切れる祭司長。

「どうする?ディザイアンだってよ。」
「でも行かないと…私は神子だから。」
「そっか。それじゃぁ、俺達も手伝うよ。」
「…やっぱりボクも行くんだね…」
「当たり前だろ!でもその前にちょっとレベルを上げておいた方がいいかもな。」

 何しろ相手はディザイアン。念を入れるに越した事はない。

「な〜に、聖堂と村の間を二三回ぐらい往復すれば十分だろう。傷付いたらコレットの父さんに回復してもらえばいいし。でも何でコレットの父さんって回復出来るんだ?もしかして実はエルフだったとか?」
「や〜だ、そんな事あるわけないじゃない。」
「そうだよ、ロイド。」
「だよな。」

「「「ハハハハハ…」」」

「よ〜し、それじゃぁ行くか。」

 てなわけで、三人は取り敢えず一度外に出るとレベルアップに励む事にしたのであった。



 その頃聖堂入り口では、ファイドラが四人の男に囲まれていた。

「神子はどこにいる?」
「……」

 どんなに詰め寄られてもファイドラは答えない。死を覚悟しているようであった。
 するとそこへ、なんともタイミング良く修行を終えたロイド達が走り込んで来たのだった。
 目を見開くファイドラ。

「!!…コレット、逃げるんじゃ!」

 その叫びに男達は同時に振り返った。

「どうやらあの少女が今回の神子のようです!!」

 それを見ていたロイドは軽く舌打ちした。

(言わなきゃ分らないのに、馬鹿な婆さんだぜ。)

「よ〜し、神子よ、命はもらった!」

 剣を抜く男達。

「させるかよ!!」

 ロイド達も構える。

 戦闘が始まった。
 男達は戦闘員だけあってかなりの手練れであったが、レベルアップしたロイド達の敵ではなかった。 簡単にけりがついてしまう。
 しかしそれで終りではなかった。その直後に物凄い地響きがしたと思ったら、今度は岩のような大男が現れたのである。

「我らの崇高な理想を邪魔する奴は許さん!!」

 再び戦闘に突入。
 だが新しく現れた男ヴィーダルは、そのがたいの大きさだけでなく強さも先程の連中の比ではなかった。

「ロ、ロイド…こいつ、強いよ!」
「くっ…」

 ついに膝を折ってしまう三人。
 ヴィーダルはガハハハと言う下品な笑いを上げると、そんな三人に向かって止めとばかりにハンマーを振り上げたのだった。

 まさに絶体絶命の窮地!
 と、その時…。

“ガチーン!”

 突然一人の男が両者の間に割り込んで来て、ヴィーダルのハンマーを受け止めたのである。

「!!」

 そしてその謎の男は一言「下がっていろ。」と言うと、呆気に取られているロイド達の目の前で瞬く間にヴィーダルを倒してしまったのだった。

「すごい!すごいや!!強いよ、あのおじさん!」
「フ…それ程でもあるがな。」

 男は興奮するジーニアスに満足気な笑みを浮かべると、武器をクルクルと回しながら格好良く鞘へ収めようとした。
 だが、よく考えたら自分の武器はダブルセイバーなのでそれが出来ず……仕方なく横に立てて持っている事にする。
 そしてロイド達の方に目をやると、

「無事か?…無事のようだな。」

 長い流れるような青い髪を背中で束ね、(その気で見れば)上品な顔付き。なかなかの美男である。 そしてその左手の甲にはきらりと光るものが…。

 ロイドは目を見開いた。
(!!…あれはエクスフィア?)

「有難うございます〜。おかげで助かりました〜♪」
「いやいや、なんの、なんの。で、そなたが今回の神子なのか?」
「そうで〜す。私が神子で〜す。だから神託を受けにいかないと…」

 するとそんなコレットにファイドラが残念そうに言う。

「じゃがコレット、護衛の者がディザイアンにやられてしまったのじゃ。」
「え〜〜、そんな〜…どうしよう…」
「それなら俺が護衛を引き受けるよ!」
「ロイドか…。じゃがそなたでは心許無いのう。」

 その言葉を聞いた青髪の男は、驚いたようにロイドを見た。

「…お前はロイドと言うのか?」
「そうだけど。人に物を尋ねる時はまず自分から名乗れよな。」
「私は傭兵…」
「へえ、洋平さんって言うのか。純和風な名前だな。」
「違う!傭兵は仕事!!名前はユアンだ。」
「ほうほう、洋平・ユアンさんね。するって〜と、ハーフって事か?」

(こいつは折り紙付きのアホだ。どうやらロイド違いだったようだな。)

 男−−−ユアンは取り敢えずアホは放っておく事にした。ファイドラの方へ向き直る。

「ところでご老人、金さえくれれば私が護衛に付いてもいいが?」

 しかしファイドラからの返事はない。よく見ればなにやら怒っているようだ。
 そこでユアンは少し考えた後言い直した。

「ところでお嬢さん、金さえくれれば私が護衛に付いてもいいが?」

 すると途端にファイドラはコロリと態度を変えたのだった。

「おお!そうですか?それは有り難い!!」
「……」

 ババアとは言え女。扱いが難しい…。

「商談成立ですな。では神子、参りましょうか。」

 コレットの肩を抱きそそくさと聖堂の中へ入ろうとするユアン。

「待てよ!俺も行く!!」

(フ…その言葉を待っていた。)
 ほくそ笑むユアン。
 だがそんな事はおくびにも出さずに、

「ロイド、お前は足手纏いだからここで待っているがいい。」
「分かった。」

(よし、来るぞ、来るぞ…)
 続く言葉を待つユアン。ところが…

 ……
 ……
 ……
 ……

「?……それで終わりかいっ!!」
「何だよ。『足手纏いだから待っていろ』って言うから『分かった』って返事したんだろ。他に何を言えって言うんだよ。」
「お前は悔しくないのか!?男ならここで一発『だったら勝手に付いていくまでだ』と啖呵を切るべきだろう!」
「来るなと言ったのはあんたじゃないか。それとも一人だけじゃ怖いとか?」
「そ、そんな事はないぞ。暗いから怖いとか、モンスターがたくさん出そうだから不安だとか、そんな事は全然ない。」

 涙目で必死に否定するユアン。
 ロイドは溜め息を突いた。

「分かったよ。一緒に行ってやるよ。」
「おお、そうか!やはり男はそうでなくてはな。」


 こうしてロイド、ジーニアス、ユアンの三人が護衛に付く事となり、コレットは神託を受ける為に聖堂の中へと入って行ったのだった。


−つづく−