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謎の女に蹴り飛ばされたユアン。気が付いたら森の中にある一軒家の前にいた。
「…ここはどこだ?」
キョロキョロと辺りを見回すユアン。
すると馬小屋の中に見覚えのあるものが…。
「ん?あれはもしかしてノイシュの尻ではないか?」
確認の為に近付いてみると、
「おお、やはりそうだ。これはまさしくノイシュの尻!!お前こんな所にいたのか。懐かしいな〜、元気だったか?」
ノイシュとは旧知の仲であった。嬉しそうにペンペンと尻を叩くユアン。
しかしノイシュは嫌そうに尻尾でその手を振り払っている。
こいつは昔からそうだった。私を見ると何故かすぐに尻を向けてくる。私は飼い主だと言うのに…。
もしかして嫌われているのだろうか?
それとも馬鹿にされているのか?
「犬の分際で生意気な!」
「ガルルルル〜!(犬じゃねえよ、アホ!)」
唸り声を上げ、ユアンを尻尾で叩き飛ばすノイシュ。
そのお陰と言ってはなんだが、小屋の反対側に飛ばされたユアンはそこである人物の墓を見付る事が出来たのであった。
墓に刻まれていた名前は『マーテル』。
それはユアンにとって忘れようとて忘れられない名前であった。
「!!何故ここにマーテルの墓が!?一体誰が弔ってくれたのだ?」
小指ほどしかない脳ミソをフル回転して考え込むユアン。
馬小屋にはノイシュがおり、ここには最愛の妻マーテルの墓が。そして謎の弔い人と来れば、もう答えは一つしか思い浮かばなかった。
ロイドだ!
死んだと思っていた息子のロイドが実は生きており、マーテルを弔ってくれたのだ。その証拠にここにはロイドの墓がないではないか。
「おお、ロイド!よくぞ無事で…」
思わず涙ぐむユアン。
あの聖堂でロイドと言う少年に会った時もしやと思ったが、あれは単なる人違いだった。あんなアホが私の息子であるわけがない。
しかし今回はこれだけ事実が揃っているのだから間違いはない。ロイドはこの小屋でひっそりと生き延びてくれていたのだ。
「ロイド〜〜!」
感動の対面を果たすべく、小屋に駆け込むユアン。
しかしそこには…。
「なんでぇ、いきなり。あんた誰?」
「!?…貴公がこの家の主なのか?」
「ん?まあ、貴公なんて代物じゃねえがな。この家の主は俺だ。」
(!!こいつがロイド?)
即座にユアンの頭の中で先程の推理と男の言葉を合わせた連立方程式が組まれる。
ノイシュ+マーテルの墓=ロイドは生きている
この家の主=ロイド
この家の主は俺だ=目の前の男がロイド
うむ、間違いはないようだ。
しかしなんだな、幼児の頃はあんなに可愛かったと言うのに、よもやこんな老けた少年に育ってしまうとは……何と言うか、人生の悲哀を感じてしまうな。
「余程苦労をしたのだな。すまなかった、ロイド!」
「はい?ロイド?」
「だが安心しろ。これからはこの私が守ってやるからな。」
男をギュッと抱きしめるユアン。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。確かにロイドはこの家に住んでいる。しかし俺はロイドじゃねえ!」
「え?」
「俺の名はダイク。ロイドなら今村の学校に行っているぜ。」
「……もしかしてそのロイドと言うのは、赤い服を着た二刀流だとか?」
「なんでぇ、もう会ったのかい。」
!!あのアホが本当に私のロイドだったのか!
「ところであんた誰?」
ダイクは尋ねるがそこにはもうユアンの姿はなく、彼がドアをぶち破り飛び出して行った跡だけが残されていた。
「なんだ、ありゃ?」
その人形に開けられた穴を見詰めながら、ダイクはしきりに首を傾げるのだった。
猛スピードで村へやって来たユアンは、その足でまっすぐコレットの家へと向かった。
そんなユアンをファイドラが愛想良く迎え入れる。
「おお、剣士様、よくぞ来て下された。今、再生の旅についての会議をしていた所なんじゃ。旅にはもちろん剣士様も同行して下さるのじゃろう?」
そう言ってチラリと分厚い財布を見せるファイドラ。
「お、おう、もちろんだ。(金さえ貰えれば)このユアン、例え火の中水の中、神子様をきっちりお守り致しましょう。わっはっはっ!」
「これは頼もしい。どうかお願いしますぞ。それと旅にはもう一人、この方も同行して頂く事になりましたんじゃ。」
ファイドラの言葉に進み出た女を見て、ユアンは目を見開いた。
なんとそれは、忘れもしない聖堂にてユアンを蹴り飛ばした気狂い女だったのである。
「お、お前は!」
思わず声を上げるユアン。しかし女は素知らぬ様子で、
「初めまして。リフィルと申します。村で教師をしておりますの。どうかよろしく。」
「きょ、教師!?」
目を丸くしているユアンにファイドラが言った。
「そうなんじゃ。それで教師としてぜひとも教え子の旅に同道したいとの申し出られてな。リフィル殿は魔術も使えるからきっとユアン殿の良いサポート役になってくれるじゃろう。」
「……」
するとそこへ、今まで部屋の隅で黙って様子を見ていたロイドが口を挟んできた。
「旅には俺も行くからな。コレットの事は俺が守るんだ!」
ロイドに目をやるユアン。
あの分厚い財布を見たが為にすっかり忘れていたが、そう言えば私はこいつに会いに来たのだった。
しかし今は再生の旅の方を優先せねば。何しろこっちは任務だからな。
となるとこいつに付いて来られてはちと面倒だ。ただでさえこんな凶暴女を連れて行かねばならんのだ。その上こんな馬鹿が加わったら目も当てられん。それにこいつは今回の事に巻き込まれない方がいい。それがこいつの為なのだ。
そう考えたユアンはロイドを追い払う事にした。
「……駄目だ。お前は足手纏いにしかならん。」
「!!そんな事ない!俺だって戦えるって事は聖堂でちゃんと証明しただろ。だから…」
「あんなものは証明にはならん。旅に出れば聖堂のモンスターなど比べ物にならない程のものがウジャウジャしているんだ。子供は大人しく留守番していろ。」
「俺はもうガキじゃないし、どんなモンスターが出て来たって怖くなんかない!俺だって立派に役に立ってみせるさ。だから…」
しつこい、しつこすぎるぞ、こいつ!
なんて頑固な奴なんだ。一体誰に似たんだ?
ようし、口で言って分からなければ実力行使に出るまで。
「うるさ〜い!駄目だと言ったら駄目なんだ!!」
そう叫ぶとユアンはロイドを家の外へ放り出したのだった。
それを見ていたリフィルが溜め息を突きながら言う。
「可哀想だけど、今回ばかりは仕方がないわね。」
こうして翌朝、コレットとユアン、リフィルの三人は世界を再生するべく旅立って行ったのだった。
−つづく−