再生の旅に出たコレット、リフィル、ユアンの三人は、火の封印場所である旧トリエット跡を目指して砂漠を進んでいたのだが、そこへ突然ノイシュに乗ったジーニアスが現れたのだった。
 目を丸くする三人。
 何しろ今ジーニアスは村で留守番している筈なのである。従って当然ここに現れる訳がなく、三人が驚いてしまったのも無理はない。
 ジーニアスはそんな一同の前まで辿り着くと、ノイシュから飛び降り早口で捲し立てた。
「たっ、たっ、大変なんだよ!ロイドが…ロイドが…トリエットで突然ディザイアンが現れて…それで連れて行かれちゃったんだ!!」
 興奮した様子のジーニアスを見て眉を顰めるリフィル。
「少し落ち着きなさい。訳が分からないわ。第一あなた達は村で留守番をしていた筈でしょう。それが何故トリエットなんかにいたの?」
「そ…それは…」
 リフィルに睨み付けられ口籠るジーニアス。だが隠し切れないと観念したのだろう、今まで起こった事をたどたどしく話し出したのだった。

 人間牧場の事、マーブルの事、村がディザイアンに襲われた事、それが原因で村を追い出されてしまった事…。

「村が襲われた時に僕達の家も焼けちゃったし…本当にごめんなさい。」
「……起こってしまった事は仕方がないわ。それで私達の後を追ってトリエットまで来たと言う訳ね。」
「うん…みんな僕が悪いんだよ。僕がロイドを巻き込んじゃったんだ。だからお願いだよ、ロイドを助けたいんだ。力を貸して。」
 必死に頼み込むジーニアスを前に困ったような表情を浮かべユアン見るリフィル。
 ユアンは咳払いをすると言った。
「駄目だ。私達は再生の旅の途中なのだぞ。そんな寄り道をしている時間はない。この旅には世界の命運がかかっているのだ。何事にも優先されて然るべきだろう。」
「……」
 “世界の命運”とまで言われてしまうとさすがのジーニアスもそれ以上逆らう事は出来ず、俯いてしまう。
「分かったら行くぞ。無論トリエット跡へな。」
 そう言ってさっさと歩き出すユアン。
 するとそんなユアンにコレットが言った。
「先生、ユアンさん、やっぱりロイドを助けに行きましょう。ロイドは大切な友達なんです。見殺しになんて出来ない。」
「おいおい神子、私の話を聞いていなかったのか?この旅は大切な旅で…」
 コレットは何も言わず、眉を顰め振り返ったユアンの目の前に通帳を突き出した。
 その残高を見たユアンの目が見開かれる。
「こ…これは!ゼロがひい、ふう、みい…ええと次は何だっけ?……とにかく沢山付いているぞ!」

(…姉さん。ユアンさんって、もしかして数が3までしか数えられないとか?)
(そうみたいね……ロイドが二人いるみたいで頭が痛いわ…)

「お婆様のヘソクリです。旅に出る時に『何かあったらこれを使ってくれ』と持たせてくれたんです。もし一緒にロイドを助けに行ってくれたなら、ここからボーナスをお支払いしますけど、どうします?」
「ボ、ボーナス!?」
 ユアンは目を輝かせるとジーニアスを見た。
「で、ジーニアス。ロイドが連れ込まれた場所は分かっているのか?」
「え?う、うん…砂漠の隅に立っている変な建物の中だよ。でもさっき助けには行かないって…」
「まあ、何だ、やはり友達は大切にしなくてはならんからな。なぁに、ロイドを救出するだけだ。それ程時間はかからんだろう。」
「……」
「よ〜し、その変な建物へ向かうぞ。ジーニアス、案内しろ!」
 ジーニアスの腕を掴み張り切って歩き出すユアン。
「どうやら彼は、お金さえチラつかせれば簡単に信念を曲げてしまうようね。」
 リフィルとコレットは苦笑を浮かべると前を行くユアン達の後を追ったのだった。


−つづく−