ロイド救出に“変な建物”へと乗り込んで来たユアン達の前に一人の男が立ち塞がった。
「仲間を助けに敵地に乗り込んで来るとは見上げた度胸だ。だがこれ以上、先に行かせる訳にはいかぬ。」
 突然の変な男の登場に目を丸くするユアン達。
「あなた、何者?」
「邪魔をしようと言うのか!(どこかで聞いた台詞だ)」
「おじさん、服が破けているよ。」
「ほんとだ〜。私が縫ってあげようか?」
 後半の台詞に男はムッとした表情を浮かべた。
「余計な御世話だ。これは破れているのではない。私のファッションだ。」
「うわ〜、趣味悪っ!」
「それじゃぁ、駄目だね。」
「え〜いっ、煩い!!どちらにせよ、こうやってお前達の方からのこのこやって来てくれたのは、我らにとって好都合。この場でついでに神子(の命)も貰い受けてくれよう!」
 武器を抜き放つ男。ユアン達も身構える。
 するとそこへどこからか声が聞こえてきた。

『ポンタさ〜ん!悪いけどさ、この料理俺にはちょっと味が薄いんだよね。醤油か何かないかな〜?』

 ずっこけるポンタ。
(あのガキ、私の味付けにケチをつけるのか!と言うかそんな事で勝手に館内放送を使わんでもらいたい。)

 頭にきたものの放っておくわけにもいかず…。
「すまぬ、ちょっとタイムだ。」
「はい?タイム?」
「すぐに戻る。ちょっと待っていてくれ。」
 ポンタは目を丸くしているユアン達にそう言い置くと、何処かへ走り去って行ってしまう。
 顔を見合わせるユアン達。
「へ〜、あのおじさん、ポンタさんって言うんだ。可愛い名前だね〜。」
「可愛い?間抜けな名前の間違いではないのか?」
「姉さん、今の声って…」
「何も言わないで、ジーニアス。頭痛がしてきたわ。」

 そして言葉の通り、ポンタはすぐに戻って来た。
「ポンタさん、もう用事は済んだんですか〜?」
「誰がポンタだ、誰が!!…私の名前はボータだ!!」
「え?でも今…」
「空耳だろう。」
 ボータは咳払いをすると再び武器を抜き放った。
「思わぬ邪魔が入ったが、仕切り直しと行こうか。」
 これで今度こそ一気に戦闘に突入と思いきや…。

『ポンタさ〜ん、わりぃ、箸を落っことしちゃったよ。新しいの持って来てくれる?』

「くっ…す、すまん、またちょっとタイムだ。暫しお待ち願いたい。」
 またもや走り去っていくボータ。
 しかし今度はなかなか戻って来ず、三十分後に再び姿を現した時には何故かエプロンをしていた。
「待たせたな。それでは今度こそ本当に参る!」
「い、いや、参るったって…その恰好…」
「え?」
 実はボータは度々のロイドの呼び出しに辟易し、新たにカニ料理を出して来たのだった。
 カニを食べる時、人は無口になる。これでロイドもしばらくは静かにしていてくれるだろうと考えての事であった。だが急いでいた為にエプロンを脱ぎ忘れている事に全く気付いていなかったのだ。
「あ、ああ、これは失礼した。」
 慌ててエプロンを脱ぎ捨てるボータ。
「では、今度の今度こそ本当に行くぞ!」
 三度目の正直で、ようやく戦闘に突入。
 だが散々待った割にはすぐに方が付いてしまう。
「くっ…」
 膝を折ったのはユアン達の方であった。
 そんなユアンに向かってボータが言う。
「やはりあなた相手に私一人では……十分であったか!
 目を剥くユアン。
「おいっ、台詞が違うぞ!!てか、それでは日本語になっておらんではないか!!」
「あなたが負けたのだから仕方がなかろう?文句を言われる筋合いはない。」
「本当ね。あなた、傭兵のくせに弱すぎよ。」
「まだ魔術一つ使えんお前に言われたくはない!」
 リフィルを睨み付けるユアン。
「大体武器がいかんのだ。ウッドダブルセイバー(そんなのあるのか?)なんて初期装備で勝てるわけがない!」
「今まで持っていた武器を旅費の足しにと叩き売ったあなたがいけないのではなくて?」
「寄って集って私から装備を剥ぎ取り売り払ったのはお前らの方だろうが!!」
「それでも新しい武器を買い与えてあげたのだからブツクサ言わないでほしいわね。」
「そですよ〜。そもそもユアンさんが、お婆様から前金をたんまり貰っているくせにケチンボだからいけないんじゃないですか。」
「おのれは、聖堂で救ってやった恩を忘れてそう言う事をいうのか!?」
「恩着せがましい男って最低ね。」
「ぬゎんだとぉぉぉ〜〜!」

「いい加減にせんか!!」

 言い争うユアン達をボータが一喝する。
「この期におよんで仲間割れとは見苦しい。初期装備だろうが負けは負けだ。約束通り神子(の命)は貰うぞ。」
「いや、約束なんてしておらんのだが…」
 ブツブツと言っているユアンを余所にコレットに近付いて行くボータ。
「ちょ、ちょっと、コレットが危ないよ。ユアンさん、なんとかしてよ。」
 焦ったジーニアスはユアンを無理矢理押し出した。
 ところがユアンは、助けるどころか愛想笑いを浮かべるとこう言ったのだった。
「へっへっへっ、ふつつかな娘ですが、どうぞ貰ってやって下さい。」
 目を見開くコレット。
「ひっど〜い!私にも選ぶ権利はあるよ〜。こんなおっさん、好みじゃないもん。無理〜、絶対に無理!!」
「何を言うか、小娘がっ!私の方こそお前のような毒舌娘などごめんだ!」
「毒舌娘なんて酷い!キュートな小悪魔って言ってほしいです〜。」
「何がキュートだ!片腹痛いわ!!……て言うか、誰が嫁に貰うなんて言った?貰うのはお前の命だ!!」
 ボータは話の脱線の原因であるユアンを一瞥すると、改めてコレットに向き直り武器を振り上げた。

 まさに絶体絶命。
 と、その時…

『ポンタさ〜ん、ご飯お代わり〜!!』

 その緊張も何もない声に思わず固まってしまう一同。
 ボータは溜息を突くと武器を収めた。
「……どうやら今日は日が悪いようだ。この決着は改めてつけるとしよう。」
 そして館内のスピーカーに目をやり、
「ロイドよ、次こそはお前を我が物に!……てか、何でこの台詞を私が?これはあなたが言うべき台詞でしょう。」
 さっさと先に引き揚げてしまった上司に向かって恨み事を呟きながら走り去って行く。

「…姉さん、何だったんだろうね、あの人。」
「さあ?…最近、陽気の所為でおかしな人が出没するから気を付けた方がいいかもしれないわね。」
 訳が分からずしきりに首を傾げるユアン達。
 その頭上では、呑気なロイドの声が響き渡っていた。

『ポンタさ〜ん、お代わりまだ〜?』


 その後ロイドは無事に救出され、一行は再び再生の旅についたのであった。


−つづく−