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ルインが襲われ町の人々が連れて行かれてしまった事を知ったユアン達は、アスカード人間牧場へ潜入する事にした。
ディザイアンに変装し、厳重な警備をまんまと突破したユアン達。施設内を駆け抜け辿り着いた所は、監視室のような部屋であった。
「どうやらここはエクスフィアの製造所のようね。」
「そのようだな。」
眉をしかめながら呟いたリフィルに、ユアンも頷く。
と、その時だった。なにやらドアの外に不穏な気配を感じたユアンは、サッとコレットの後ろに避難する。そのコレットはリフィルを盾にした。
「?」
二人の奇妙な行動に首を傾げるリフィル。
するとその直後ドアが開かれ、なんとディザイアンが魔術攻撃をしかけてきたのだった。
「!!フォースフィールド!」
リフィルは驚愕しながらも咄嗟に防御し魔術に耐える。
「大丈夫か!?コレット。」
「…ちょっとロイド、それは私はどうなっても構わないという意味なのかしら?」
「え?…い、いや、先生なら回復魔法を使えるし大丈夫かな〜って…」
「そういう問題じゃないでしょうっ!!」
「そうだぞ、ロイド。そりゃあ、この女がいなくなれば嫌な勉強もしなくてよくなるわけだし、お前の気持ちも分からんでもない。だがやはり一言あって然るべきだろう。それに被害に遭ったのは私もなのだぞ。」
「だってあんたは初めから数に入ってないし。」
あんぐりと口を開け抗議しようとしたユアンをリフィルがぶん殴る。
「大体あなた達もあなた達よ。どうして私を盾にするの!」
「だってユアンさんが私の後ろに隠れるから私も避難しなきゃって…そうしたらすぐ傍に先生が立っていて、先生なら私より背も高いし壁になるかなって思ったから。」
(私は鬼太郎の“ぬりかべ”かい!?)
「そもそもユアンさんがいけないんですよ。どうして傭兵のくせに隠れるんですか?それじゃあ逆さまじゃないですか。」
「そりゃあ、神子がこの中で一番頑丈そうだったから。」
「ひっど〜い!うら若き乙女をつかまえて何て事を…。私は頑丈なだけが取り柄のユアンさんとは違うんですよ!」
「『だけ』とは失礼な!」
「本当の事じゃないですか。」
「なんだと!」
責任を擦り合う二人。そこへしいなが割って入った。
「ちょっといい加減におし!喧嘩してる場合じゃないよ。後ろをごらんよ。」
その言葉にハッとしてしいなが指さす方へ目をやると、そこのドアが開き変なおやじが入って来たのだった。
「何だ?この妙に人間離れ…いや、ハーフエルフ離れした顔のおやじは。」
「ロイド、きっとこのおじさんは人間とのハーフじゃないんだよ〜。この顔からすると、ハーフキツネとか?それともハーフ爬虫類かな?いずれにしてもあまり他人の心の傷に触れない方がいいと思うよ〜。」
「そうか…気の毒なおやじなんだな。」
コレットとロイドから憐みの目で見られ、ムッとするおやじ。
「な、な、何が心の傷だ!劣悪種の分際で馬鹿にしおって!!私はディザイアンの五聖刃…」
「サンダーブレード!」
得意げに名乗ろうとしたおやじをユアンの魔術が遮る。
「!!グワアー!!」
「へえー、あんた五聖刃のグワアーっていうのか。」
「馬鹿な事を言っとらんで、今の内にとっとと逃げるぞ。」
ロイドの腕を掴み走り出すユアン。他の面々も後に続く。
しかし逃げ切る事は出来なかった。施設内で行われている、エクスフィアを人間の体から抜き出している作業を目撃してしまった為にその場に凍りついてしまったのだ。
すぐにクヴァル達が追い付き、ロイド達はディザイアンに囲まれ退路を断たれてしまう。
「…まさか、エクスフィアは人間の体で作られているの?」
クヴァルを睨み付けるリフィル。
しかしクヴァルはそんな彼女の怒りも全く意に介さぬ様子で、涼しい顔をして言った。
「フ、それ以外に劣悪種を飼うどんな意味があると言うのですか。」
「酷いっ!」
「何が酷いと言うのです。酷いのは我々が大切に育てて来たエクスフィアを盗み、使っている君達の方でしょう。…さあロイド、君が使っているエクスフィアはユグドラシル様への捧げもの。返してもらいましょうか。」
「ユグドラシル…それがディザイアンのボスなのね。」
「そう。偉大なる指導者ユグドラシル様の為、そして我が功績を示す為、そのエクスフィアが必要なのですよ。」
「くっそ、俺のエクスフィアは一体…」
「それは私が長年研究して来たもの。あと少しでハイエクスフィアとして完成できたものを…」
「はい、エクスフィア?」
「ハイエクスフィアですっ!!返事をしてどうする!」
ロイドの馬鹿さ加減に思わず怒鳴ってしまったクヴァルは、すぐに我に返ると話を続けた。
「ええと、どこまで話しましたっけ……そうそう、その大切な完成間近のエクスフィアを薄汚い培養体の女が持ち逃げしたのです。その女は培養体M012、人間名マーテル。これだけ言えばもう分かるでしょう。」
「!!マーテルって…それじゃあ母さんが…?」
愕然とするロイド。
「そうです。つまり君のエクスフィアは君の母親が培養したもの。マーテルはそれを持って脱走した。もっともその罪を死であがないましたが。」
「お前が母さんを…」
「勘違いしてもらっては困りますね。マーテルを殺したのは私ではない。君の父親なのですよ。」
「嘘をつくな!」
「嘘ではありません。要の紋がないままエクスフィアを取り上げられ、マーテルは怪物となった。それを君の父親が殺したのです。愚かだとは思いませんか。」
「死者を、ぐ…ぐ…ぐろ…ええと……」
思わず声を上げたユアンであったが、言葉に詰まる。
そんなユアンにリフィルがそっと囁いた。
「『馬鹿にするのは止めろ』と言いたいのでしょう。無理して難しい言葉を使う必要はないわ。折角のシーンが台無しじゃないの。ちなみに『愚弄』が正解なのだけど。」
「……し、死者を愚弄するのは止めろ!」
「くっくっくっ…所詮は二人とも人間。生きている価値もないウジ虫よ。」
「生憎だったな。私はハーフエルフだ!!」
(えっ!?)
ギョッとしてユアンの方を見る一同。
「…なんでそこでユアンさんが出てくるの?」
「えっ?い、いや、つい勢いで……別に私がその父親だというわけではなくて…」
するどい突っ込みをしてきたジーニアスを、あたふたと誤魔化しにかかるユアン。
「て言うか、ユアンさんもハーフエルフだとか?」
「『も』という言い方は止めなさい、ジーニアス。私達もそうだとばれてしまうでしょう。」
このリフィルの爆弾発言に、し〜んと静まり返る室内…。
その静寂を破ったのはユアンであった。
「な〜あんだ、お前達もそうだったのか。それなら必死に隠す事もなかったな。これからはハーフエルフ同士、仲良くしような。」
「…いや、そういう問題じゃなくてね…」
顔面蒼白のジーニアスとリフィル。怯えたように仲間を見渡す。
しかしそんな二人にロイドとコレットがこう言ったのだった。
「心配するなよ。たとえハーフエルフだろうが、ジーニアスはジーニアスだ。そんな事は関係ないよ。」
「うん、二人(+一人)とも私達の大切な仲間だからね。」
「有難う〜、ロイド、コレット!」
友情を確かめ合い抱き合う、ロイド、コレット、ジーニアス。
(出来ればそういう事はよそでやってもらいたいんだけどね…)
その間にも包囲網を狭めてきているディザイアン達を見て独り言ちたしいなは、懐から最後の一枚である札を取り出すと叫んだ。
「とにかく今は脱出するよ!!」
こうして、しいなが召喚した式神によってなんとか脱出できたユアン達は、取り敢えず一度ルインへ引き上げる事にしたのだった。
−つづく−