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クヴァルより真実を聞かされたロイドはショックを受けていた。
しばらくの間左手のエクスフィアを見詰めながら考え込んでいたが、やがてそれをはずすと投げ捨てようとする。
「こんなもの…こんなもの!」
するとその手を押さえて来た者がいた。
「待て。それを捨てるつもりなのか。」
ユアンであった。
ロイドはユアンを睨み付けると言った。
「…あんたの言いたい事は分かっている。これがあったから俺達は戦ってこれた。でも俺は我慢出来ないんだ!…俺は…俺は…こんな人の命を弄ぶようなものを使って戦いたくなんてない。だから…。もう決めたんだ。止めたって無駄だぜ。」
するとユアンはそんないきり立つロイドにこう言ったのだ。
「別に止めやせん。」
そして懐からガサガサとレジ袋を取り出すとそれを差し出してきた。
目を丸くして袋とユアンの顔を見比べるロイド。
「いくらここが廃墟同然のルインだとは言え、ポイ捨ては良くない。だからゴミはちゃんとこの袋に入れて持ち帰・・・」
「それは違うだろっ!!」
と、そこへ突然声が割り込んで来たかと思ったら、誰かに蹴り飛ばされ、呆気にとられたロイドの前から消えるユアン。代わりに現れたのはクラトスであった。
「ちょっと待て!何でここでお前が現れる!?」
「煩いぞ。馬鹿は引っ込んでいろ。」
クラトスは、むっくりと起き上がり抗議して来たユアンを軽くあしらうと、何事もなかったかのようにロイドに向き直り言った。
「それを捨てるなんてもったいない。捨てるぐらいなら、私にくれ。我がレネゲードで有効に活用してやろう。」
ニッコリと笑みを浮かべ手を差し出して来たクラトスを見て戸惑うロイド。
「え・・・いや・・・ええと・・・」
するとそこへまたもや違う声が割り込んでくる。
「それも違うだろっ!!」
クラトスの姿が視界から消え去り、今度はコレットが現れた。
見ればクラトスはコレットにブッ飛ばされた勢いで後ろに立っていたユアンと衝突してしまったようで、二人仲良く伸びてしまっている。
コレットは、そんな二人を驚愕の目で見ているロイドの肩を掴んで自分の方に向かせると、
「ロイド、そのエクスフィアはお母様の命でもあるんだよ。お母様だけじゃない。エクスフィアの犠牲になった人達は好きで犠牲になったわけでも、エクスフィアとなった挙句、捨てられる事を望んだ訳じゃないんだよ。エクスフィアを捨てるのはいつでも出来る。今はそんな犠牲になった人達の思いを背負って私達は戦わなくちゃいけないんじゃないかな。」
『こんな簡単な事も分からないのかよ。あんたもあの二人みたいになりたいの?』とでも言うかのように、自分の顔を覗き込んでくるコレットを恐怖の目で見詰めるロイド。
なにしろユアンならともかく、あの強そうなクラトスまでもが一撃でのされてしまったのである。もしここで『やっぱり駄目だ』など答えようものなら、自分などシノア湖のもずく…いや、藻屑となってしまうだろう。
そこでロイドはコクコクと頷くと、
「そ…そうだな。やっぱ俺達は犠牲になった人達の思いをおんぶに抱っこで戦わなくちゃいけないよな。そ、それに、あのクヴァルって野郎は母さんの仇でもあるわけだし…お、俺、頑張るよ。」
「うん!それでこそ私のロイドだよ。」
ニッコリとしてロイドに抱きつくコレット。
ロイドはなんだか熊に抱かれているような気分になってしまうのであった。
こうして再び牧場へと乗り込んだロイド達。
しかし端末を操作しながらあれこれと情報を引き出している内に警報が鳴り響いてしまう。
「まずいわね。このままではディザイアン達がやってきてしまうわ。ここは解除班と侵入班に分かれて行動した方がいいでしょう。」
「でも姉さん、どうやって分けるの?ロイドは侵入班で決まりとだとしても、他の皆も侵入班になりたいみたいなんだけど。」
「そうね…公平にじゃんけんと言うのはどう?」
リフィルの提案に早速じゃんけんを始める一同。
「じゃんけんぽん、あいこでしょ、あいこでしょ、あいこで……」
一時間後…
「あいこでしょ、あいこでしょ、あいこで……」
二時間後…
「あいこでしょ、あいこでしょ、あいこで……」
気の合う仲間達…なんて言っている場合ではなく、その内にクヴァルがやって来てしまった。
「クックックッ、まだこんな所をうろついているとは…劣悪種と言うのは本当にアホですね。ではそのエクスフィアを返してもらいましょうか。」
ロイド達に襲いかかろうとするクヴァル。
ところが…
「「「「「「うるせえなっ!今、死ぬか生きるかの真剣勝負の最中なんだ。邪魔するんじゃねえ!!」」」」」」
「!!ぎゃああああ〜〜〜!」
そしてそれから更に三十分後、
「よし、これで決まったわね。侵入班にはロイド、ユアン、コレット。解除班には私とジーニアスとしいな。これでよろしくて?」
リフィルの言葉にしいなは肩を竦めると言った。
「仕方ないね…。あたしたちは皆を解放するから、あんたら、気を付けて行くんだよ。」
「ああ、任せておけって。しいな達も気を付けてな。よ〜し、それじゃあ、あのキツネ野郎をぶっ飛ばしに行くか!!」
張り切ってクヴァル討伐に赴こうとしたロイド達侵入班であったが…よく見るともうすでに、自分達のすぐ傍でクヴァルが血まみれになって倒れているではないか。
「ありゃ?なんでこいつこんな所で死んでんだ?」
「ほんとだ〜、どうしたんだろうね〜。」
「地獄の業火を浴びたのではないか?まあ、なんにしてもこれで手間が省けたな。こいつも劣悪種の痛みを存分に思い知ったであろう。よかった、よかった。」
「「「「「「ハハハハハ…」」」」」」
「…やったぞ。母さんの仇を…倒したんだ!」
左手のエクスフィアに手を当て、感無量のロイド。
そんなロイドにユアンは目を伏せるとそっと呟いたのだった。
(有難う、ロイド…。見ていてくれたか、マーテル。私達親子が力を合わせてお前の仇をとったぞ。)
『いや、あんたは何にもやっていないから。』というマーテルの魂の声は軽く聞き流され、ユアンは感動の涙をさめざめと流すのであった。
−つづく−