3.決意の時
人間とは狡賢い生き物だ。
自分を守る為ならどんなに汚い事も平気でやってのける。
だから人を信じるな。
信じたところで必ず裏切られる。
それが四千年間、この世界を見詰め続けてきた私の出した結論だった。
しかし、彼女はそんな私にこう言ったのだ。
それでも私は信じていたい。
何度裏切られようとも信じ続けていたいの。
そうすればいつかきっと…
その日はアンナの定期検診の日で、ちょうど仕事が休みだったクラトスも付き添って病院を訪れていたのだが、アンナが検査をしている間、クラトスは担当医に呼ばれたのだった。
「お腹の赤ん坊は順調です。ただ…。」
カルテを見ながら難しい顔になる主治医。
クラトスには医師の言いたい事は分かっていたが、敢えて何も語らず医師の次の言葉を静かに待った。
「ただお母さんの方がちょっとね…。検査をしても特に異常は見られないのですが…」
この世界のほとんどの者はエクスフィアの存在を知らない。しかも長きに渡り衰退世界に身を置いていたこのシルヴァラントでは医学の進歩も殆どなく、いくら検査を繰り返した所でアンナの体の異常を見付けられる筈もない。
医師の下した結論は、クラトスの予想通りのものだった。
「奥さんは少々虚弱体質のようですね。誠に言いにくいのですが、現状では母親と子供どちらも無事に、というのは難しいというのが正直なところです。もちろんこちらとしても最善は尽くしますが、ご主人には万一の時の覚悟をしておいていただきたい。なあに、大丈夫ですよ。確か奥さんはルインの出身でしたよね?ルインっ子は逆境に強いといいますから。」
(!?)
アンナは自分が追われる身である事を十分承知している。どんな些細な事でもそこから自分が牧場を脱走して来た事が知れてしまう可能性もあると分かっている以上、例え相手が医師であれ彼女が自分の出生地を軽々しく口にする筈はない。
そう、これはこの医師が鎌をかけているのだ。
だとすれば当然この医師は…
「妻がルインの出身?…ほう、そうでしたか。」
人のよさそうな笑みを浮かべながらそう答えたクラトスを、医師は探るような目で見た。
「ご存じでなかったので?」
「ええ、全くの初耳です。ですがもしそうなら先生が仰られた通り、僅かながらでも希望が持てます。そうですよね、ルインの人は強いと言いますものね。もちろん仰られた通り、私も万一の時に備え覚悟を決めておくつもりではおりますが…。」
クラトスは立ち上がると深々と頭を下げた。
「先生、妻と赤ん坊の事、どうかよろしくお願い致します。」
「……え、ええ、まあ、最善は尽くすつもりでいます。」
そしてクラトスは、どぎまぎした様子の医師を残し部屋を後にしたのだった。
アンナは検査も終わり待合室でクラトスを待っていた。
「あ、クラトス。ここよ。」
クラトスの姿を逸早く見付けたアンナは手を軽く上げて合図すると、それに気付き近付いてきた彼に笑顔をみせた。
「すまない。待たせたな。」
「ううん、ちっとも。私も今さっき終わったところだから。お腹の子は順調ですって。」
そう言って愛おしげにお腹に手をやるアンナ。
「そうか、それはよかった…じゃあ、帰ろうか。」
クラトスは微笑みを浮かべると、アンナの手をとり、急ぎ足で医院を出た。
そんな、どこかいつもと違うクラトスの様子に首を傾げるアンナ。
「どうしたのクラトス?なんだか様子が変よ。」
「…実は、医師が我々の素性に気付いたようなのだ。」
「え?…それって…」
「お前がルインの出身かどうか、それとなく探りを入れられた。恐らくは手配書が回ってきたのだろう。脱走者の手配書は必ずと言っていいほど、まず最初に各地の医者に配られる。エクスフィアを埋め込まれた者は体に不調をきたし医者にかかるケースが多いからな。手配書には名前を書かれる事はないが、特徴として左手の石の事は書かれていただろう。」
「そう言えば今日の診察の時、私の左手をじっと見ていたわ。」
アンナは外出する時はいつも左手にサポーターをする事でエクスフィアを隠しており、医師には、冷え性なので保温目的でやっているのだと説明していた。今まではその説明に不審を抱くような気配は見せていなかったのだが、今日に限っては殊更興味を持っている様子だったのである。
「いつもサポーターをしているものだからさすがに不審に思ったのかもしれないわね。」
「いや、それだけではないだろう。この町にとって私達は氏素性の分からぬ新参者だからな。まず最初に目をつけられても然るべきなのだ。今頃通報しているかもしれん。」
そのまま急ぎ足で町の門までやってきた二人であったが、クラトスはそこで突然足を止めると一方に目をやり、舌打ちをしたのだった。アンナがクラトスの視線を辿ってみると、向こうから数人の兵士がやって来るのが見える。
(あれは…ディザイアン?)
クラトスはと見ると、彼はすでに剣を抜き放っていた。
「思ったより早かったな。こんな町の真前で戦闘をしたくはないのだが…」
だがノイシュに乗って逃げるにも、もう遅すぎた。二人は瞬く間に取り囲まれてしまったのである。
「アンナ・アーヴィングだな?大人しく我々と一緒に来てもらおうか。」
「断わる。」
アンナを背に庇い、彼女の代わりに返答をするクラトス。
「クラトス様、どうかその女を私どもへ引き渡し、あなたはクルシスへお戻り下さい。ユグドラシル様も、今戻れば、これまでの事は不問に付すと仰っています。ですからどうか…」
「断わると言った筈だ。」
「では致し方ございませんな。」
それを合図に、兵士達は剣を抜くと一斉にクラトスに飛びかかったのだが、如何せん力の違いがありすぎた。勝負は一瞬でついてしまったのである。
「行くぞ、アンナ。」
クラトスは倒れ伏している兵士達には目もくれず、アンナをノイシュの背に乗せるとそのまま何処かへと立ち去ったのであった。
「何?手配中の二人を発見したと?」
ユグドラシルはプロネーマの報告に目を見開いた。
「はい。ルインとは大分離れた町に姿を現したそうでございます。しかしながら我々が駆け付けた時にはもう立ち去った後でして、今行方を捜索しております。」
「そうか…。」
「あの、ユグドラシル様…その手配されている二人の内の男の方なのですが……その…大天使クラトス様だとの噂は本当でございましょうか?」
次の瞬間、プロネーマはユグドラシルの氷のような瞳に睨まれ身を強張らせた。
「何故そのような事を聞く?余計な詮索はせぬ方がお前のためだ。」
「はは っ、申し訳ございません。ただ二人がその町に留まっていた理由が理由でございましたもので、よもや四大天使様がと思ったものですから…」
思わずそう言ってしまったものの、プロネーマは直ぐに後悔した。ユグドラシルの纏っている空気が一瞬にして変わったのである。
「理由?…なんだそれは?」
「え?……い、いえ、それは…」
ユグドラシル射るような視線を一人その身に受け、恐怖に口ごもってしまうプロネーマ。
「得た情報はすべて報告せよと言った筈だ。隠さずに早く言え!」
「は、はい、町の者に聞いた話では…女が身ごもっていたと…」
「!!!」
「あ、ですがこれは確かな話ではなく…その…噂のようなもので…それにその一緒にいる男が子供の父親かどうかも分かりませんし…」
プロネーマは目を見開いたまま固まっているユグドラシルを見て、なんとかその場を取り繕おうとするのだが、こんな時に限って気の利いた言葉が全く出て来ず、あたふたとするばかりであった。
やがてユグドラシルは目を伏せ大きく息をつくと、気味の悪いぐらい静かな声で言った。
「……もうよい、下がれ。」
「は?」
「聞こえなかったのか?下がれと言ったのだ。二人の探索はそのまま続けるように。くれぐれも内内にな。そして居場所が分かったら、何を置いても真っ先に私に知らせろ。分かったな?」
「は、はい。かしこまりましてございます。」
頭を下げ逃げるように退出して行くプロネーマ。
ユグドラシルは一人になると、僅かに震える手でテーブルにおいてあったグラスに酒を注いだ。それを一気に飲み干した彼の目が剣呑な光を帯びる。
「……子供だと?…馬鹿な…クラトスと薄汚い女の間に子供が出来たというのか!!」
次の瞬間、ユグドラシルの手の中のグラスがパキーンという派手な音を立てて砕け散った。
破片で傷ついた手から血が滴るのも構わずに、ユグドラシルはブルブルと体を震わせながら怒りの目で宙を睨みつけたのだった。
あれからはクラトス達は、家には戻らず、ひたすらあの場から離れる事のみに専念した。あの状況から考えるに家の方にも追っ手が行っている事は確実であろう。ならば、危険を冒して戻るよりは、そのまま旅立つ方が良いと考えたのだった。
ノイシュを使っての移動のおかげでだいぶ距離を稼ぐことが出来、今のところ追っ手の姿は見受けられない。そこで二人は、もう日も暮れて来た事もあり、今日はこの場で野宿をする事にしたのだった。
その夜、パチパチと燃える焚き火の前でクラトスは、眠っているアンナの顔を眺めながら考え込んでいた。
エクスフィアは確実にアンナの命を削っていっている。彼女は自分の前では決して笑顔を絶やさないが、その実、胸中は死への恐怖や不安で一杯に違いない。マナが減り続けている今、そんな彼女が出産などすれば、それは死へとつながりかねないだろう。あの医師が言ったように、子供が死ぬか、アンナが死ぬか…。いや、もしかしたら二つの命が同時に消えてしまう事さえ有り得るのだ。
それを防ぐには…。
「やはり他に方法はないか…」
クラトスがそう呟いた時だった。
「何の方法がないの?」
ハッとして思考を中断するクラトス。
いつの間に目覚めたのだろう。アンナがじっと自分を見詰めていたのだった。
「…すまん、起こしてしまったか。」
「ううん、目を閉じていたけど眠ってはいなかったわ。色々と頭に浮かんできてしまって…」
アンナは体を起こした。
「……ごめんなさい、クラトス。」
「え?」
「だって、手配書っていうのは各地に配られているわけでしょう?それじゃあ、もうどの町にも行けないじゃない。これからは野宿が続くでしょうから、そうすれば今以上にあなたに負担をかけてしまう事になるわ。お尋ね者の私が一緒にいる所為で、あなたまで危険な目に遭わせてしまうかもしれない。」
「お前の所為ではない。お尋ね者なのは私も同じなのだ。…それにこの先ずっと野宿を続けて行くつもりはない。」
「えっ?でも…」
「恐らく、お前が言うように手配書は各地に配られている事だろう。だから、このシルヴァラントを出てテセアラに渡る。」
目を見開くアンナ。
「これはずっと以前から考えていた事なのだ。世界が二つに分かれている事は話したな?テセアラはここと違ってマナも豊富にあるし、医学の進歩も目覚ましい地だ。お前にとってもお腹の子にとっても向こうに渡った方がいいに決まっている。」
「でもどうやって?……あ、ユアンさんね!あなた前に言っていたものね。ユアンさんの所に向こうの世界に渡る事ができる装置があるって。」
しかしクラトスは、アンナのこの案に頭を振ったのだった。
「いや…あいつは駄目だ。確かに奴の所から向こうへ渡る事は出来る。だが、奴を頼る事は出来ない。」
「どうして?だってユアンさんは良い人だわ。前にも助けてくれたし、きっと今回も相談にのってくれるんじゃない?」
「聞いてくれ、アンナ。町を出る時に襲ってきた兵士を覚えているな?奴等は私の事を“クラトス様”と呼んでいたが、ディザイアンが私の事を知っているはずがないのだ。あれはディザイアンではなく、レネゲードという別の組織の者。そしてそのレネゲードを組織したのが斯く言うユアンなのだ。」
「!!!」
「アンナ、ユアンに気を許すな。今のあいつは己の目的を果たす為ならどんな事でもするだろう。他人を偽り、道具として使う事も厭わない…。だがこれはユアンに限った事ではない。本当ならこんな事をお前に言いたくはないのだが、親切そうに近付いてくる全ての者を疑ってかかった方がいい。人間とは狡賢い生き物だ。自分を守る為ならどんなに汚い事も平気でやってのける。他人など信じるものではない。信じたところで必ず裏切られる。特に私達は危険な立場にいるのだから。」
「……」
「すまないアンナ。お前がそんな事をしたくはない事は十分に承知している。しかし…」
するとアンナはクラトスの言葉をそっと遮ると、微笑を浮かべ静かに頭を振ったのだった。
「いいの。あなたの気持は分かっている。…でも、ユアンさんが駄目だとすると、どうするつもりなの?他に渡る方法なんてないでしょう?」
「いや、一つだけある。かなり危険な方法ではあるが…」
そう言って、遠くに聳え立っている救いの塔へと目をやるクラトス。
「……えっ!?まさか…」
「そのまさかだよ。二つの世界はあの塔でつながっている。ユアンのベースを使えない以上、もうあの塔から渡るしか方法はない。ただこれは余りに危険すぎる為にずっと迷っていた…。やはりあそこへ行くのは怖いか?」
クラトスはアンナを見た。
アンナはしばらくの間考えている様子であったが、やがて顔を上げると笑みを浮かべクラトスの手をとった。
「行きましょう。私なら大丈夫。だってあなたがいるんですもの。怖くなんてないわ。」
「約束する。お前に怖い思いはさせない。私が必ずお前を守る。無事に向こうへ渡らせてみせるから。」
クラトスの言葉に、アンナは嬉しそうに頷いたのだった。
こうして二人は翌朝、救いの塔へ向かったのだが、その道すがらクラトスはユアンの事を考えていた。
恐らくあいつの目的はアンナのエクスフィアと、そしてオリジンの封印そのものである私の命…。アンナにも言ったように、今のあいつはどんな事でもやってのけるだろう。現にあいつはすでにユグドラシルを裏切っている。全てはマーテルの為。愛する彼女を救いたいという一心で、あいつは鬼となったのだ。
ならば私は…?
アンナの為なら鬼となれるだろうか?
ユグドラシルに剣を向ける事が出来るだろうか?
はっきりと『出来る』とは言い切れない自分がいた。
そう、クラトスは未だにミトスの事を引きずっており、彼とのしがらみを断ち切れずにいたのだった。
「本当に卑怯なのは私の方かもしれんな。」
自嘲の笑みを浮かべ呟くクラトス。
その呟きはアンナの耳にも届いていたが、彼女は何も言う事無く、先を行くクラトスの背中をじっと見詰めていたのだった。
救いの塔はこの地に住む人々にとって天へと続く神聖なる塔であり、再生の神子以外は近付く事さえ許されていない。例えその教えを破り近付こうとしても、切り立った山々に囲まれているので徒歩で行く事は不可能であった。
だが羽のあるクラトスにとってはそれは大して問題ではなかった。アンナを抱き、少々かわいそうではあったがノイシュはウィングパックに入ってもらって、空から塔へ入る事にする。
人が入る筈のない塔の警備は手薄で、クラトス達は難なく内部に侵入する事ができた。
クラトスは、ノイシュをウィングパックから出してやるとアンナの手を取り奥へと進んで行った。途中何度も天使達とすれ違ったのだが、意思がない彼等は人間のアンナを見てもさして興味を示す事もなく、ただ通り過ぎて行くだけであった。
やがて転送装置まで辿り着くと、クラトスはアンナの手を離し言った。
「ここからテセアラへと出る事が出来る。お前はノイシュと一緒に先に行って待っていてくれ。ここは殆ど使用する者がない故心配ないとは思うが、念の為に地上に出たら物陰に身を隠していた方がいいかもしれんな。」
「クラトスは?」
「私は寄る所があるのだ。心配しなくても大丈夫だ。直ぐに戻るから。」
しかしアンナは、そう言って立ち去ろうとするクラトスにしがみ付いて来たのだった。
「嫌よ。私も行く!」
「アンナ、直ぐに戻ると言ったであろう?ここに来るまでにも天使にしか会わなかったではないか。だから何の心配もない。」
「だったら私が一緒に行っても大丈夫でしょう。」
「一体どうしたと言うのだ?いつものお前らしくないぞ。」
「いいえ、全然私らしいわ。これが私なのよ。」
「アンナ……」
全く離れる様子のないアンナに、クラトスは戸惑いの表情を浮かべた。
「怖いの…怖いのよ。ここであなたの手を離してしまったら、もう二度と戻ってこないような気がして…。」
アンナは顔を上げるとクラトスを見詰めた。その目から涙が溢れているのを見て、目を見開くクラトス。
「お願い、連れて行って。危険は覚悟している。精一杯、足手纏いにならないようにするわ。だからお願いよ、クラトス。」
縋るような目で見上げてくるアンナを前に、クラトスはしばし考えているようだったが、やがて小さく息を吐くと決断を下したのだった。
「…分かった。一緒に行こう。」
アンナは嬉しそうに顔を輝かせた。
クラトスが向かった先はデリス・カーラーンにある自分の部屋であった。
「ここがあなたが4000年間暮らしていた部屋…」
感慨深い面持ちで部屋を見回しているアンナ。
必要最低限の物しか置いていない、何の飾り気もない部屋。ある意味それはいかにもクラトスらしいとも言えるものであった。
「何もない味も素っ気もない部屋だろう。ほとんど寝るだけの部屋だったからな。」
「ううん、あなたらしい素敵な部屋だわ。」
アンナのストレートすぎる感想に、クラトスは思わず苦笑を浮かべた。
「でも、一体どうしてここに?何か大切な忘れ物でもあったの?」
「大切といえば大切だがな……確かこの引き出しの中に…おお、あった。」
クラトスが取り出したものを見て、アンナは驚きの表情を浮かべた。
それは要の紋であった。
「これは私が予備にとっておいたクルシスの輝石の為の要の紋だ。お前に寄生したエクスフィアは特別なものだから、これに変えた所であまり意味をなさないかもしれんが、それでも今付けている紋よりはましだろう。どうせここに来たのだからついでに取って来ようと思ったのだ。」
「それだけの為に危険を冒して?私の為に……」
それを鎖に通すと、アンナの首にかけてやるクラトス。
「クラトス……有難う…」
「何も泣く事はあるまい。」
「だって、嬉しいんですもの。」
クラトスはそんなアンナの肩を優しく抱くと言った。
「これで用事は済んだわけだし、こんな所に長居は無用だ。行こう。」
そして二人は寄り添うように部屋を出たのだが、そのまま先程の転送装置の所まで戻ろうとしたその時だった。
「クラトス?……クラトスじゃないか!」
聞こえて来たのは忘れようにも忘れられない声…。
「ユグドラシル様…」
「よかった。戻って来たのだな。」
笑みを浮かべクラトスに近寄ろうとしたユグドラシルは、クラトスの傍にアンナの姿があるのに気付くと立ち止まった。
「何故その女がここにいる?クラトス、お前は戻って来たのではなかったのか!?」
ユグドラシルは怒りの表情でアンナを睨みつけた。
「お前がクラトスの子を身籠っているというのは本当だったのだな。クラトスを騙してお前は…」
「お待ち下さい。それは違います。彼女は…」
クラトスは必死に弁明しようとしたのだが、それは逆にユグドラシルの怒りに火をつけてしまった。
「お前の話は後でゆっくりと聞くとしよう。今はその女を始末する事が先だ。」
そしてユグドラシルは拳に魔力を集中させると、それを一気にアンナに向けて放ったのだった。
すかさずアンナの前に立ち塞がり粋護陣をかけるクラトス。一応粋護陣をかけていたものの、やはりユグドラシルの魔力は強く、そのダメージは予想以上のものだった。クラトスは呻き声を上げると、その場に膝をついてしまう。
「クラトス!!」
アンナは悲鳴を上げると、蹲るクラトスへ駆け寄った。
「何故そんな女を庇うのだ、クラトス。どうやらお前はその女に騙され、のぼせてしまっているようだな。よし、それならこの私がその女の化けの皮を剥がしてやろうではないか。そうすればお前の目も覚めるだろう。」
クラトスは痛みを堪え、顔を上げるとユグドラシルを睨みつけた。
この目の前にいる男は、もう昔のミトスではない…。それは十分に分かっていたはずなのに、私は心のどこかで、もしかしたら以前のミトスに戻っているのではないかと期待していたのだ。
甘かった…そんな事はあるわけがないのに。
お前はいつまで迷えば気が済むのだ。
いくら昔を懐かしんだとて過ぎ去った時はもう戻らない。
お前は妻と我が子を守ると誓ったのだろう?
だったらそろそろ中途半端な態度は改めるべきだ。
今こそ過去のしがらみを断ち切る決意をする時なのではないか?
次の瞬間、クラトスはアンナを抱き上げるとノイシュの背に乗せ叫んだ。
「ノイシュ行け!アンナを頼む!!」
ノイシュは一瞬躊躇したが、クラトスの真剣な眼差しを見て取ると猛スピードで走り出した。
「嫌よ、おろして!…クラトス、クラトス ッ!!」
アンナの叫び声を残し走り去って行くノイシュに向かって、再度ユグドラシルの魔力が放たれたのだが、それはクラトスの術によって弾かれた。
「クラトス!どういうつもりだ!?」
ゆっくりと立ち上がると剣を抜くクラトス。
「!!…私に剣を向けるのか?」
「彼女を傷つける者は私が許さない。それが例えあなたであろうとも…」
それはクラトスが過去のしがらみを断ち切った瞬間であった。
「私を倒せるとでも?」
そう言って掲げたユグドラシルの手にエターナルソードが現れる。
しかしクラトスはあくまでも冷静であった。
「やってみなければ分からない。窮鼠猫を噛むとも言う。己を過信せぬ事だ。」
直ぐに戦闘に突入し、静まり返ったヴェントヘイムに剣の交わる音が響き渡った。
ユグドラシルには、エターナルソードを手にした自分は無敵であるとの自負があった。それはたとえ相手がクラトスであろうが同じ事で、難なく勝てると踏んでいたのだ。
しかし、クラトスは予想外の反撃を見せていた。彼は素早く動き回りながら要所要所で技を決めてきており、それは少しずつだが確実にユグドラシルの体力を削っていた。
(チッ!手こずらせる…)
正直、これほど長引くとは考えていなかった。昔の剣の師とはいえ、自分の剣の腕は当にクラトスを超えているものと思っていたのだ。それなのに何故…。
この時、ユグドラシルは自分の中にある迷いに気付いていなかったのだった。
周りの者全てを憎み冷酷に振る舞っていた彼は、それはかつての同志であるクラトスに対しても同じであると思っていた。だが、実際には彼はクラトスを憎むどころか、慕い求めていたのだった。言うなれば、ユグドラシルはクラトス以上に過去のしがらみにとらわれてしまっていたのかもしれない。
そんな思いが知らず知らずユグドラシルの動きを鈍らせ、決定打を加える事を躊躇わせていた。そんな彼が、すでに過去を断ち切る決意をしたクラトスをそうも容易く倒せる筈もなかったのである。
しかし戦闘が長引くにつれ、やはり力の違いは如実に表れ始めていた。
ユグドラシルがダメージを受けながらも未だ余力を残していたのに対し、クラトスは、戦闘前に受けた傷が回復していなかった上に、挌上相手に全力で向かっていた為疲れの色を見せ始めており、次第に動きが鈍くなってきていた。
そしてついにクラトスは動きを捉えられ、ユグドラシルの一撃に吹き飛ばされてしまったのである。
「…やはり鼠は鼠。猫には敵わなかったようだな。」
笑みを浮かべ、倒れ伏しているクラトスに歩み寄っていくユグドラシル。
「さあ、いつまでも駄々をこねるものではない。あの女の事は忘れ、大人しく私の元へ戻って来るのだ。」
だが、そう言ってユグドラシルがクラトスを抱え上げようとしたその時だった。彼の前にいきなり巨大な岩の槍が突き出して来たのだった。クラトスが放ったグレイブだった。
咄嗟に両腕でその身を庇うユグドラシル。
そして彼が再び目を開けた時には、立ち上る土煙りの中、クラトスの姿は消えてしまっていたのである。
クラトスは瀕死の状態だった。あの体ではそうそう速く動けるはずもなく、どう考えてもこの僅かな時間に目の前から消えてしまう事など不可能であった。
「…空間移動術か!」
瞬時に他の場所へと移動する魔術…確かにクラトスも天使であるからにはその術を使う事は出来るのだが、この術は高度な技術を必要とする上に魔力の消耗が激しい。あの瀕死の状態では長い距離の移動は無理であろう。だとすれば、彼はまだこのデリスカーランから出てはいない筈だ。
「プロネーマ。そこにいる事は分かっている。姿を現せ。」
少し前から二人の戦いを覗いていたプロネーマに気付いていたユグドラシルは、彼女を呼び出した。
「ユグドラシル様、今怪我の手当を…」
「大事ない。それよりも奴の事だ。深手を負っている故、まだそう遠くへは行っておるまい。探し出し連れ戻せ。念の為に全ての転送装置を押さえておいた方が良いかもしれんな。だが、見付けても決して殺すでないぞ。分かっているな?」
「かしこまりました。」
プロネーマは頭を下げると姿を消して行った。
彼女を見送ると、ユグドラシルは怪我の具合を調べた。大体はかすり傷であったが、その中のいくつかは相当深く切りつけられている。クラトスは本気だった。本気で自分を…。
“己を過信せぬ事だ。”
それは昔、クラトスから何度となく言われた教え…。
「そうだね。そうだったね、クラトス…」
子供に返ったかのような口調でポツリと呟いたユグドラシル。
その瞳は、どことなく寂し気であった。
一方、クラトスはひたすら転送装置に向かって歩き続けていた。
全身に受けた傷はどれも深手で酷い出血であった。こんな体で慣れない空間移動術を使用すれば、ただでさえ残り少ない体力を容赦なく削り取ってしまう事は分かっていたが、あの場から退避するには他に方法がなかったのである。
立っているのも辛い激しい眩暈の中、それでもクラトスは足を動かし続けた。
アンナと生まれてくる子の為にもここで倒れる訳にはいかない。どんな事をしても自分は愛する家族の元へ生きて戻らねばならない…その思いだけがクラトスの動くはずもない体を動かし続けていたのだった。
しかし、それにも限界があった。もともと動いている事さえ不思議なぐらいであった体は、転送装置まであと半分の距離を残した所でついにその動きを止め、クラトスはその場に崩れ落ちてしまったのである。
薄れゆく意識の中、クラトスは近付いてくる人物の姿を認めた。
「……ユアン?」
だが、それを再度確認する事は出来ず、クラトスは完全に意識を失ったのだった。
クラトスが呟いた通り、それはユアンであった。ユアンもまた、プロネーマと同じく二人の戦いを見ていたのである。
クラトスとユグドラシルの確執は以前から彼が望んでいた事であった。しかしクラトスはデリス・カーラーンを去った後も、未だにユグドラシルに対しての忠誠心を失ってはおらず、なかなかうまく行っていないのが現状であった。
そのクラトスがユグドラシルに刃を向けるとは、このユアンでさえ思わず己の目を疑ってしまう程の出来事だったのである。
「それ程までにお前はあの女を……」
ユアンは倒れているクラトスを見下ろし呟いた。
と、その時である。ユアンは背後に高まる魔力を感じ、咄嗟に身を屈めた。その彼の頭上をファイアボールがすり抜けて行く。それを放った主を確認すべく振り返ったユアンの目が驚きに見開かれた。
「お前は…アンナ!?」
そこにいたのはアンナとノイシュであった。アンナは転送装置まで戻ったものの、何だか嫌な予感がした為に再び戻ってきたのだった。
「何故お前が魔術を使えるのだ!?」
ノイシュが魔術を使えない事は分かっていた。だとすれば残っているのはアンナしかいない。しかし、如何に特別なエクスフィアに寄生されているとは言え、彼女は所詮人間であり、突然に魔術が使えるようになるわけがない。
(彼女は普通の人間ではなかったということか?…そんな馬鹿な事が!)
アンナはユアンの問いには答えずに再び手に魔力を集中させると叫んだ。
「すぐにクラトスから離れなさい。さもなければあなたを殺すわよ。」
アンナの目は真剣だった。そこからは以前見せてくれたような好意的なものは全く感じられない。
「……成程。クラトスから私について色々と聞いたわけだな?」
「そんな事は関係ないわ。ただ私はクラトスを守りたいだけ。人を傷つけるのは嫌だけれど、クラトスを守る為なら私は何だって出来る。」
アンナの手に込められた魔力は本物であった。信じられない事ではあるが、やはりアンナには特別な力があったのだ。彼女のクラトスへの強い思いが、エクスフィア力を借りてその眠っていた力を呼び覚ました…。
ユアンは大きく息をつくとアンナには構わず、クラトスの傍らに膝をついた。
「何をしているの!?離れてと言ったのよ!!」
アンナは立て続けに魔力を放ったが、そのいずれもユアンの手によって弾き飛ばされてしまう。
「まだ目覚めたばかりなのだ。力を使い過ぎない方がいい。さもないとお前も動けなくなるぞ。それにこのままだとクラトスも死ぬ。」
「……」
ユアンはクラトスの体を抱き上げると言った。
「こっちだ。ついて来い。」
「え?…でも転送装置があるのは向こうでしょう?」
「全ての転送装置には兵が張り付いている。しかし私の部屋にも転送装置があってな。まだそこまでは手が回っていないだろう。ぐずぐずしている時間はない。来るのか?来ないのか?」
「行くわ。」
今はこのユアンを信じるしかないと思い、アンナは決断したのだった。
こうしてユアンの部屋にあった転送装置を使い脱出に成功したアンナは、ユアンの案内で近くの林へと逃げてきていた。
「ここならしばらくは安全だろう。テセアラの事はクラトスがよく分かっている。ここで体力を回復させて何処かへ発てばいい。」
「有難う、ユアンさん。あなたはやっぱり…」
「止めてくれ。良い人だとでも言うつもりか?」
ユアンはアンナの言葉を遮った。
「勘違いしないで貰いたい。私がお前達を助けたのは、それが私にとって益となるからにすぎない。クラトスが私の事をどう言ったのかは分からんが、確かに私はお前のエクスフィアを狙っているし、クラトスにも死んでほしいと思っている。お前達とは敵同士という事だ。」
「それなら何故私達を助けてくれたの?あなたの力を持ってすれば今すぐだってこの場で私達を殺す事も出来る筈。それなのにあなたはそうしないどころか、クラトスの回復までしてくれた。それは何故?」
ユアンはアンナのその問いには答えず、ただこう言っただけだった。
「これでクラトスは大丈夫だろう。もう少ししたら意識も戻る筈だ。それじゃあ私は戻るぞ。いつまでも戻らなければこっちまで疑われてしまうからな。」
ユアンが、アンナと別れ部屋に戻って来くると、そこにプロネーマの姿があった。
「何だプロネーマ。人の部屋に勝手に入ってこないで貰いたいな。」
「何故部屋に鍵をかけていたのですか?」
疑わしげ気な目を向けてくるプロネーマ。
「何故?決まっているだろう。出かけていたからだよ。留守の間、お前のような無粋な者が立ち入らんとも限らんからな。」
ユアンの嫌味を、プロネーマは軽く受け流した。
「緊急事態故、合鍵を使わせていただきました。クラトス様が現われたのです。そこで転送装置を全て押さえたのですが、ここにもあった事を思い出しまして。」
「クラトスが!?」
プロネーマは驚いているユアンの顔を探る様にじっと見詰めたが、そこからは何も読み取る事は出来なかった。
「…クラトス様はユグドラシル様を襲って逃走したのです。今行方を捜しているのですが。」
「それはまた驚いたな。あのクラトスがまさか…。だが、ここには現れなかったぞ。見ての通り、転送装置もたった今私が使ってきたのだが、地上でもそれらしき人影は見なかった。」
「左様でございますか。では他を当たると致しましょう。」
「そうしてもらいたいものだな。お前の顔を見ていると気分が悪くなる。」
プロネーマはムッとした表情を浮かべ、退出していった。
一人になったユアンは疲れたようにソファーにその身を埋めると、先程のアンナの言葉を思い返した。
“それなら何故私達を助けてくれたの?あなたの力を持ってすれば今すぐだってこの場で私達を殺す事も出来る筈。それなのにあなたはそうしないどころか、クラトスの回復までしてくれた。それは何故?”
「そんな事、分かるわけないだろう。」
小さく呟きをもらすユアン。
確かに自分はクラトスの命を狙っていた。彼が死ねばマーテルを解放できるのだ。あの時はまさにその絶好の機会であった。だが、どうしても出来なかった。何故かはわからない。気が付いたら救いの手を差し伸べてしまっていたのだ。
「私もまだまだ甘いのかもしれんな…」
ユアンもまた、迷いの中にいたのだった。
ちょうどその頃、地上ではクラトスが意識を取り戻していた。デリス・カーラーンで意識を失った筈の自分が何故このような所にいるのかも不思議ではあったが、何より驚いたのはアンナが魔法を使っていた事だった。クラトスの意識が戻るまで、彼女は傍らで回復魔法をかけ続けていてくれたのだった。
「さっき突然に使えるようになったのよ。」
驚いた様子のクラトスに、照れたような笑いを浮かべるアンナ。
「何故魔術が使えるようになったのかは私自身分からないの。ただあなたを助けなくちゃって、それだけを考えていたわ。もしかして、このエクスフィアのお陰かしら。」
「エクスフィアはその者が本来持っている力を最大限まで引き出してくれるだけだ。新たな能力を与えてくれるものではない。そもそも魔術とはマナの流れを読み取れなければ使えないものだ。だからマナを見る事が出来ない人間には魔術を使う事は出来ない筈なのだがな。」
「そうなの?でも、私は以前からマナが見えてたわよ。あなたの蒼いマナやユアンさんのピンク色のマナも…」
「えっ?」
「変でしょう?でも本当の事なのよ。……実は私は養女で、亡くなった両親とは血の繋がりがないの。本当の親が誰かも分からないし顔も覚えていないのだけれども、もしかしたらそっちの家系にエルフがいたのかもしれないわね。」
「…そうなのか。」
「でもこれで、これからは戦闘の時にあなたをサポート出来る。まだうまくコントロール出来ないんだけれど練習してちゃんと使えるようにするわ。ああでも、最初から使い過ぎると体に負担がかかるってユアンさんに言われたから、だんだんと少しずつね。」
「ユアン!?」
「あ、ごめんなさい。まだ話していなかったわよね。実は、私達を助けてくれたのはユアンさんなのよ。」
そしてアンナはクラトスに、これまでの事をつぶさに語って聞かせたのだった。
それを聞いたクラトスは、驚きの表情を浮かべ呟いた。
「ユアンが…まさか…」
「ねえ、クラトス。やっぱりユアンさんはそんな悪い人じゃないと思うわ。だって、危険を冒してまで私達を助けてくれたのよ。」
「アンナ、私とて奴が根っからの悪人だと思っている訳ではない。ただ、今の奴は信用するべきではないと言っているのだ。」
「何故?そんなのおかしいわ。だってあなた達はずっと助け合って来た仲間なのでしょう?それなのになんだかあなた達を見ていると、お互いを全く信用していないように思えるわ。」
「その通りだ。私達の信頼関係など当の昔に崩れ去ってしまっている。マーテルが殺されたあの日に全てが変わってしまったのだ。壊れてしまったものは元には戻らない。もう昔の私達に戻る事など出来ないのだ。」
悲しげに救いの塔を見上げるクラトス。
(そう、もう元には戻れない…私達はいつの間にか別々の道を歩むようになってしまっていたのだ。)
「本当にそうなのかしら?」
「え?」
「人と人との関係は物じゃないのよ。たとえ壊れてしまったとしても戻す事が出来る筈だわ。大切なのはあなた達がお互いをどう思っているかじゃないかしら。」
「……」
アンナは優しい目でクラトスを見詰めた。
「ねえ、クラトス。あなたは前に人を信じるなと言ったわよね。確かに信じていた人に裏切られるのはとても悲しくて辛いことだわ。だから、もう二度と信じないって思っても当然かもしれない。でもね、それでも私は信じていたい。何度裏切られようとも信じ続けていたいの。そうすればいつかきっと何かが変わる筈。相手にも思いが通じると思うのよ。そんな馬鹿な人間が一人ぐらいいてもいいと思うの。」
「……甘いな。それで殺されてしまっては意味がないではないか。」
クラトスはそう言うとアンナに背を向け救いの塔を見上げた。そんなクラトスを見て、黙りこんでしまうアンナ。
そのまましばらくの間、二人の間に沈黙が流れていたのだが、やがてクラトスがポツリと呟いたのだった。
「……ミトスも…」
「え?」
クラトスは振り返るとアンナを見詰めた。
「信じ続けていれば、いつかミトスやユアンにも私の思いが通じるのだろうか?」
「ええ、きっと通じるわ。ミトスさんも、ユアンさんも悪い人ではないのだもの。ただ、もう一度人を信じて行く勇気が持てないだけなのよ。だから待ちましょう。二人が心を開いてくれる事を信じて…。」
「そうか…そうだな…。」
“ただ、もう一度人を信じて行く勇気が持てないだけなのよ”
正直、クラトスは未だ自分の本当の気持ちすら分からなかったのだ。だが、このアンナの言葉を聞いた時、冷水をかけられたような気がした。
何度裏切られても人を信じ続ける事は、恨む事より数倍の勇気がいる事だ。アンナの言う通り、私達はその勇気を持つ事が出来なかったのかもしれない。
ならば私だけでも二人を信じ続ければいいではないか。
何度裏切られてもただひたすらに信じ続ければいい。
三人の中に一人ぐらいそんな馬鹿がいたっていいじゃないか。
そうだよな?アンナ…。
それで元に戻れるかなんて分からない。
それでも、勇気を持って信じ続けて行こう。
そうすればいつかきっと…
−決意の時 終−
※当サイトのアンナさんは、「時空を越え〜」が元になっております(といってもアンナさんは最後の方にちらりと出てくるだけですが)。あれを読んでいない方には不思議に思う箇所もあったかとは思いますが、その点はご容赦下さい。