竹取物語


 むかしむかし、あるところに、竹を取り竹細工を作って生活している竹取の翁(おきな)と呼ばれる男とその妻嫗(おうな)がおりました。
 ある日の事、いつものように翁が竹林に竹を取りに行くと、光り輝く竹がありました。不思議に思って近付いてみると、なんと中から身の丈三寸ほどの鳶色の髪をした小さな子供が出てきたのです。子供のいなかった翁はその子を連れ帰ったのでした。
「わ〜、ちっちゃくて可愛いねえ。」
「そうだろう。なにしろ竹の中から出てきたもんだから驚いちまってさ、思わず連れて来ちまったよ。」
 夫婦が物珍し気にその子を撫で回しておりますと、
「えーいっ、汚らしい手で撫でまわすな!気持ちが悪い。」
「あれ〜?話せるんだあ。」
「馬鹿にするな、話す事ぐらいできるわっ!!この人さらいが!」
「人さらいって…人聞きが悪いな。あんな所にいたら風邪を引いちまうだろうから連れて来てやったんだろう。」
「余計な御世話だ。」
「でも行くトコないんだろう?」
 子供は黙り込んでしまいました。どうやら特に行く当てもないようです。
「だったらうちの子になりなよ〜。私達には子供がないし可愛がってあげるよ〜。」
「よし決まり!今日からお前は俺達の子だ!」
「そんな勝手に…」
「じゃあ自己紹介な。俺は『竹を取って置きな』っていうんだ。」
「私は『妻だろ〜な』だよ。」
「……『竹取の翁(おきな)』と『妻の嫗(おうな)』の間違いではないか?」
「あれ、そうだっけ?なんか変だと思っていたんだ。そうか、翁に嫗ね……で、これってどういう意味?」
「……翁とはじいさん、嫗とはばあさんの事だ。」
「え〜、私、おばあさんじゃないよ〜〜。」
「俺だってじじいじゃないぞ!…よし、じゃあこうしよう。俺はロイド、こっちはコレットって立派な名前があるんだから、そっちで呼んで貰おうぜ。」
「そだね〜〜。」
「……」
「こいつの名前はどうしようか?」
「こ、こいつだと!?なんという失礼な奴…それに私にはすでに『クラトス』という名前が…」
「光った竹から出てきたから『なよ竹のかぐや姫』でいいんじゃない。」
「私は男だ!」
 自称クラトスは、必死に抗議しましたが聞き入れてもらえず、結局クラトスは『なよ竹のかぐや姫』と命名されてしまったのでした。そしてかぐや姫は、本当は嫌だったものの、このお馬鹿な夫婦を放っておく事も出来ず、仕方なく夫婦の子供になる事にしたのでした。

 不思議な事に、かぐや姫を拾ってからというもの、竹林に行くとお金を見付ける日が続き、ロイド達の暮らしはだんだんと豊かになっていきました。一方、かぐや姫はどんどんと大きくなり、三か月もすると眉目秀麗な青年へと成長したのでした。
 しかしながら、相変わらず身に纏うのは女物の着物ばかり。いくら自分は男だといってもロイド達は聞いてくれません。当然の事、世間の者は皆、かぐや姫は女だと思い込み、多くの男達が我が妻にと求婚に訪れるようになってしまったのでした。中でも大層熱心な者が三名。共に高貴な公達(きんだち)で名前をリーガル、ゼロス、ユアンといいました。
 ロイドは、かぐや姫がこの高貴な三人の誰かと結婚すれば、自分達も今以上に豊かな暮らしが出来ると考え、しきりに結婚を勧めますが、当のかぐや姫はなかなか首を縦に振ってくれません。
「一体何が不満なんだよ。三人とも顔はいいし、身分も高くて金持ちだし、申し分ない縁談じゃないか。」
「何故私が男と結婚せにゃならんのだ。私は女ではないと常日頃から言っているだろうが。ただでさえ、こんな恰好をさせられて恥ずかしい思いをしているというのに、その上結婚など冗談ではない。」
「会うだけ会ってみれば〜?きっと気に入るよ〜。」
「いや、だから私は結婚などしないと言っているだろう!」
 かぐや姫ははっきりと断りましたが、またしてもロイド達は聞く耳を持たず、強引に三人の公達との面会をお膳立てしてしまいました。かぐや姫はロイド達にとって金の生る木…。折角手に入れたそれを利用しない手はないと思っていたのでした。
 それでも結婚する気など毛頭ないかぐや姫は、なんとかして三人の公達に諦めてもらおうと、無理難題をふっかける事にしたのでした。
「どうしても私を妻にしたいのならば、お三方には以下の事をやってもらいましょう。」
「「「あなたの為ならたとえ火の中、水の中。なんなりと仰せつけ下さい。」」」
 異口同音に叫ぶ三人。
「それでは遠慮なく…。まずリーガル殿には、魔物との戦闘時、一度も空振りをしない事を。次にゼロス殿にはナンパをしない事。そしてユアン殿にはこの指輪をお預けしますので、次回お会いする時まで無くさぬようにする事。期間は一ヶ月。よろしいですね?もしこれをクリアできたなら私は喜んでその方の妻となりましょう。」
 途端に三人の顔から血の気が引き、そして心の中で同時に叫びました。

 (((……む、む、無理だ〜〜〜っ!)))

 しかしどうしてもかぐや姫を諦めきれなかった三人は何とかして課題をクリアすべく涙ぐましい努力を重ねたのですが、やはりと言うか、次々に脱落して行きました。
 まず最初に脱落したのはリーガルでした。彼は課題を貰ったその日の帰り道に魔物に遭遇してしまい、見事な空振りを披露してしまったのです。それでも言わなければ分かるまいとだんまりを決め込む事にしたのですが、その現場をビデオに撮られていた為にばれてしまったのでした。
 次はユアンでした。彼は無くさないようにと指輪に鎖を通して首からかけていたのですが、ふとしたはずみに落としてしまったのです。必死に探しましたが見つからず、窮余の策で職人に同じものを作らせたのでした。そしてそれを素知らぬ顔で返却しようとしたのですが、実はクラトスが渡した指輪は特別な金属で作られた物であった為、すぐに偽物とばれてしまったのでした。
 そして最後はゼロスでした。彼はかぐや姫を我が物にするべく必死に頑張りました。しかし約束の期間まであと一日というところでどうにも我慢できなくなり、ちょっとだけよとナンパに走ってしまったのです。そこで彼は、リーガルと同じく嘘をつく事にしたのですが、そのナンパした相手がロイド家に乗り込んでしまった為に、これまたばれてしまったのでした。
 こうして三人の花婿候補は次々に失敗し、かぐや姫は結婚を免れたのでした。

 この求婚話は瞬く間に広がり、やがて時の帝であるユグドラシルの耳にも入りました。そしてこのユグドラシルも自らロイド家を訪れ求婚してきたのです。
 ロイド達は喜びました。このユグドラシルはまだ十代の子供ではありましたが、それさえ目をつぶれば、前回の花婿候補の三人よりもはるかに格が上。なにしろ帝といえば、この地で一番偉い人なのです。これ以上の良縁があろうはずもなく、いかにかぐや姫でも断る事などないだろうから、これで今度こそ自分達も高貴な者の仲間入りが出来ると思ったのです。
 しかしかぐや姫はこれも断りました。
 それでもしつこく言い寄って来るユグドラシル。そこでかぐや姫は自分が実は男である事を告げる事にしたのでした。
「帝のお気持ちは大変嬉しく思います。ですが、実は私は男なのです。男同士で結婚出来る筈もなく、ましてや帝ともあろう方なら尚更でしょう。ですからここは諦めて……」
「別に男同士だっていいじゃん。」
「はい?」
「僕は全然気にしないよ。」
「いや…でも、男同士だと子供も出来ないわけで…」
「養子をもらえばいい。ね?これで何の問題もないでしょ。だからさ、僕のお嫁さんになってよ。」
「ガキは嫌いだ。」
 いくら断ってもしつこく言い寄ってくるので、かぐや姫はついに冷たい態度に出る事にしたのですが、敵も然る者。ユグドラシルはニッコリと笑ってこう言ったのでした。
「じゃあ、大人ならいいんだね。」
 それから彼は、なんと青年の姿になったのです。
「ほら、これならいいでしょ。」
「お、お、お前は化け物か!?」
「このぐらい出来て当然だよ。だって僕は帝なんだから。帝は何でも出来なくちゃね。」

 (そういうもの…なのか?)

 かぐや姫は、ユグドラシルがどうあっても諦める様子がない事を見て取ると、
「……分かった。だが、いきなり結婚というのもな。だから最初は文通などしながら清い交際から始めよう。」
「うん、分かったよ。かぐや姫がそうしたいなら…。」
 ユグドラシルは直ぐに結婚できない事には少々不満気ではありましたが、他人との交際をあれだけ拒み続けていたかぐや姫が文通ならやってもいいと譲歩してくれた事でもあるし、この申し出を受ける事にしたのでした。

 こうしてユグドラシルとの文通が始められて三年の月日が過ぎた頃の事でした。
「おい、コレット。最近かぐや姫の様子がおかしいと思わないか?毎晩月を眺めては肩を震わせているんだよ。」
「うん、それは私も気付いていたよ。もしかして泣いているのかなって…」
「何かあったのかな?」
「こういう時は周りでうだうだ考えていても仕様がないよ〜。本人に聞いてみよう。」
 悲しみに暮れている人間に対してそんな直球勝負でいいのだろうかとロイドは首をかしげましたが、コレットがもうすでに、今晩も月を眺めているかぐや姫にスタスタと近付いて行ってしまったので、慌てて後を追ったのでした。
 ところが、かぐや姫の顔を覗きこんだコレットの発した言葉は、ロイドの心配とは裏腹なものでした。
「あれ〜〜?かぐや姫、泣いてなんかないじゃん。それどころか笑ってるよ。」
「へ?」
 ロイドもすぐに覗いてみましたが、コレットの言う通りだったのです。かぐや姫は確かに涙を流してはいましたが、しかしそれは悲しみの涙ではなく、笑い過ぎによって出てきたもののようだったのです。
 一体何がそんなに楽しいのかと、ロイドもかぐや姫の視線を追ってみますが、空には綺麗な月が浮かんでいるだけでどこにも面白いものなどありません。
「あんた…毎晩月を眺めているようだけど、一体何が面白いの?」
「ん?……ああ、お前たちか。いや、実はな…」
 かぐや姫は相変わらず肩を震わせ笑いながら、
「私はこの世界の者ではない。お前達が月と呼んでいるあの星、デリス・カーラーンの者なのだ。」
「えっ、かぐや姫は宇宙人だったの〜!?もしかして地球征服にやって来たとか?」
「ゲヘヘヘヘ、バレちまっちゃあ仕方がない。実は地球人を皆殺しにする為に……」
 思わずそう言ってしまってから、かぐや姫はハッと我に返りコレットを睨み付けると、
「ちが〜〜〜うっ!!何を言わせるんだ貴様は!ちょっと訳があってこの星におりていただけだ。征服する気など毛頭ない!」
「ふ〜ん、訳ありだったんだあ。でもかぐや姫って気難しいだけかと思っていたけど、結構ノリやすい人だったんだね〜。なんだか親近感がわいてきちゃった〜。」
 かぐや姫は咳払いをし、今一度コレットを睨み付けると話を続けました。
「ところがだ、この度晴れて故郷へ戻れる事になってな。それで毎晩母なる星を眺めていた訳だ。」
「えっ?帰るって…」
「今月十五日の満月の夜、迎えが来る事になっている。」
 ロイドとコレットは驚いて目を見開きました。
「もう直ぐお前達と別れられると思うと嬉しくて笑いが止まらない…いや、もとい、悲しくてな。それで月を眺めてはさめざめと涙を流していたのだ。」
「どう見ても笑っているようにしか見えなかったけど?」
「失礼な。私はちゃんと泣いていたのだぞ。」
 しかし、そう言っているそばから、かぐや姫の口元はついついだらしなくゆるんでしまっているのでした。でもこの際そんな事は問題ではありませんでした。このままだとかぐや姫は今月十五日には月へと帰ってしまうのです。そこで、かぐや姫を手放したくなかったロイドは帝に相談しました。これにはユグドラシルも大層驚き、かぐや姫の月行きを阻止すべく、兵士を差し向ける事を約束してくれたのでした。

 そして、その十五日の満月の夜がやってきました。
 いそいそと荷物をまとめているかぐや姫に、ロイドは言いました。
「どうしても行くのか?」
「私には私のするべき事があるのだ。それに宇宙人の私がこの地に居続ければ混乱の元になろう。」
「…止めても無駄なんだな。分かったよ、ならば俺はこの星に残り竹細工を作り続けよう。」
「そして、私はデリス・カーラーンの竹を使って細工物を作る。フ…、お互い頑張って竹細工を広めて行こうではないか。」
「そうだな。あんたがいなくなるとちょっと寂しくなるけど、俺、頑張るよ。」
「お前は私の自慢の養父だ。」
「かぐや姫…あんたの事は忘れないよ。」
 ひしと抱き合う二人。するとそこへコレットが、
「あの〜〜、感動の場面に水を差すようで悪いんですけど〜、かぐや姫、どさくさにまぎれて金を盗まないでもらいたいんですけど〜。」
 見ると、いつの間にやらかぐや姫がロイドの財布を持っており、金を抜き取っているではありませんか。
「盗むとは人聞きが悪い。これは当然の権利だ。私を引き取った後、お前達は竹林からお金を拾ってきていただろう。あれは私がこの日の為にしこしこと貯め込んでいたものなのだ。これがなければデリス・カーラーンへの車代が払えんではないか。」
「車代って…迎えの車に金がいるのか?」
「当たり前だ。公共の乗り物を使えば運賃を支払う、これは常識であろう。」
「…あ、そ。でも、あんまり持って行くなよ。俺達が生活に困っちまう。」
「大丈夫だ。その辺はちゃんと心得ておる。」
 そう言ってかぐや姫は必要な分だけのお金を抜き取ると、荷物を持って表に出ました。すると、それを待ち構えていたかのように、空から豪華な車が下りて来たのです。
「迎えが来たようだ。私は行かねばならぬ…世話になったな、二人とも達者で暮せよ。さらばだ。」
 かぐや姫はロイドとコレットに笑顔で挨拶をすると、スキップしながらウキウキと車へ乗り込みました。それと同時に車は天へと舞い上がって行きます。
「「さようならかぐや姫、どうか幸せに…」」
 車に向かって大きく手を振りながら、二人が涙ながらに呟いた時でした。
「行かせるものか―!!魔導砲用意〜〜!」
 それはかぐや姫の月行きを阻止すべく兵士を連れて現れたユグドラシルでした。
「発射 ―― !!!」
 ユグドラシルの掛け声と共に魔導砲が発射され、それは見事にかぐや姫が乗った車を撃墜したのでした。
「あ〜〜れ〜〜〜〜!?」
 悲鳴を上げ墜落するかぐや姫。落下地点にユグドラシルが駆け付けた時、かぐや姫は上半身を地面にめり込ませ気絶しておりました。すぐに引っこ抜いて心臓マッサージと人工呼吸を施すユグドラシル。
 間もなくかぐや姫は息を吹き返し、飛び起きるとユグドラシルを怒鳴り付けました。
「貴様〜〜、私を殺す気か!?」
 しかしその怒りは、ユグドラシルの悲しそうな顔を見た途端一気に失せてしまいました。ユグドラシルはひっくひっくと泣きながらこう言ったのです。
「ごめんよ。僕、寂しかったんだ。ずっと一人ぼっちだった。あなたはそんな僕と文通をしてくれた。あなただけが僕の話相手だったんだ。それなのにあなたは月へ行ってしまうと言う…だから僕は止めたかった。あなたと離れたくなかったんだ。ねえ、お願いだよ。帰ったりしないで、ずっと僕の傍にいてよ!」
 かぐや姫は涙ながらにそう訴えるユグドラシルを前にしばらく考えている様子でしたが、やがてポツリと言いました。
「そうか、お前も寂しかったのだな。私も同じだ。」
「かぐや姫も?」
「当然だろう。私はこの星の者ではなく、この地上で唯一人、デリス・カーラーンの人間なのだ。」
「…僕達、似た者同士だったんだね。」
「そうだな…よし分かった。お前がそれほどまでに言うのなら、傍にいてやろう。」
「本当に!?この星に残ってくれるの?」
 かぐや姫は、嬉しそうに目を輝かせるユグドラシルに頷いて見せました。
「ああ、これからはずっと一緒だ。」
 それからかぐや姫は苦笑を浮かべ、見事に砕け散った車の残骸に目をやると、
「帰ろうにもお前に車を破壊されてしまったからもう帰る事も出来ぬしな…ただし、しばらくは清い交際のままだぞ。」
「うん。かぐや姫さえ傍にいてくれるなら、僕はそれだけでいいよ。」

 こうしてこの星に残る事にしたかぐや姫はユグドラシルと一緒になり、幸せに暮らしたと言う事です。
 めでたし、めでたし。


−おしまい−




※原作とだいぶ違ってます。そして相変わらず、なんじゃこれ?って内容ですね…(汗)