ウサギとカメ
むかしむかし、あるところに、クラトスというカメとユアンというウサギがおりました。
二人は…いや二匹は、クラトスは面倒を惜しまずコツコツとやるタイプで、ユアンは面倒な事はとことん省いて物事全て適当というチャッカリタイプと、お互い正反対の性格だった為、事あるごとに衝突しておりました。
そして今日も今日とて、二匹は大喧嘩をしてしまったのです。
「まったく、お前ときたら本当に何をするにも遅いのだな。お前のようなのろまは見た事がない。」
とユアンが言えば、クラトスも負けじと、
「お前こそ、いつもいつも手を抜く事ばかり考えてばかりではないか。お前の仕事は雑だと噂になっている事を知らんのか!?」
「なに~~!カメの分際で生意気な!」
「何だ。お前こそ能なしウサギのくせに私を馬鹿にするな!」
睨み合う二匹。
するとユアンが言いました。
「ようし。ではどちらが優秀か、あの山を越えた向こう側の麓まで競争しようではないか。」
「のぞむところだ。」
こうして二匹はかけっこで勝負をつける事にしたのでした。
翌日の早朝、仲間が見守る中スタートしました。
「父さん、頑張れ~!バカウサギになんて負けるな!!」
「クラトスさん、ファイト!」
「ユアン様、頑張って下さい!」
「フレー、フレー、ユアンさま~~!!」
息子のロイドと、その友人のコレットの声援を受けながら、クラトスは必死になって走ります。ユアンも、仕事仲間のボータやレネゲード隊員たちに応援されながら走り始めま
した。
しかし、やはりウサギは速かった。二匹の差は見る見る広がり、やがてユアンの姿は見えなくなってしまいました。それでもクラトスは焦る事無く、地道に走り続けていたのでした。
さて、瞬く間に山の頂上へとやってきたユアン。
後ろを振り返りますがクラトスの姿は全く見えません。
「フン、所詮カメだな。私の俊足に適う筈もない。しかしこうも簡単に勝負がついてしまっては面白くないな。レースを面白くする為に、ここは一つ、ハンデをつけてやるか。」
そう言って木陰にゴロリと横になるユアン。
そしてちょっとだけ昼寝をする事にしたのでした。
それからしばらくして、ようやくクラトスが頂上へとやってくると、ユアンは木陰で大鼾をかいて寝ておりました。
「またサボってる…」
起こしてあげてもいいのですが、ユアンは足には相当の自信があるようですし、逆に余計な事をと言われるのもつまらない。
そこでクラトスは彼の事は放っておいてひたすら前進する事にしたのでした。
よっこら、よっこらとユアンの前を通り過ぎて行くクラトス。
ユアンはそんなクラトスに気付く事無く、涎を垂らしながら、幸せな夢の中にいたのでした。
「ユアン様、ユアン様!起きて下さいよ、ユアン様!!」
ユアンは、声をかけられ面倒臭そうに目をあけました。すると目の前にはレネゲード隊員がおり、なにやら焦っている様子です。
「なんだ、人がせっかくいい夢を見ていたというのに…」
「そんな暢気な事を言っている場合じゃありませんぜ。もう夕方です。」
「なに~~っ!?」
慌てて飛び起きるユアン。
見れば、隊員の言うように辺りは夕焼けに包まれておりました。
「カメは!?…クラトスはどうした?」
「とっくのむかしに行っちまいましたよ。」
「しまった~~~!!」
今からでも間に合うだろうか?
いや、是が非でも間に合わせなくては!!
ユアンは慌てて走り始めますが、何と言っても起きたての為にうまく体が動いてくれません。
「くっそお、このままでは…」
すると…
「ユアン様、お乗り下さい!!」
見ると原付にまたがったボータがやってくるではありませんか。
「おお、でかしたぞ、ボータ!!」
ほくほくと後部にまたがるユアン。
「しっかりつかまっていて下さいね。」
これで間に合う!
フッフッフッ、悪く思うなよ、クラトス。ウサギの私がカメのお前に負けるわけにはいかないのだよ。
こうしてボータとユアンを乗せた原付は、麓のゴールへと一直線に走り去って行
ったのでした。
それを物陰から見ていた二つの影…ロイドとコレットでした。
「み~ちゃった、み~ちゃった!」
「あの野郎、汚い手を使いやがって…。見てろよ。こうなったら絶対に父さんに勝ってもらわなくっちゃな!」
二匹は顔を見合すと、悪戯小僧のようにニンマリと笑ったのでした。
ユアン達をのせた原付は、麓のゴールへ向かって快調に飛ばしておりました。
「ユアン様、もうすぐです。」
「うむ。…ん?あれはもしかしてクラトスではないか?」
良く見るとはるか前方にノタノタと走っているカメの姿が見えるではありませんか。
「そのようですな。」
「フフ。馬鹿がくそ真面目に走っているわ。よし、もう少し近付いたところで降ろしてくれ。この距離なら楽に追い抜く事ができるぞ。」
「かしこまりました。」
頷いてさらにスピードを上げるボータ。
すると…。
「そこの原付バイク、止まりなさい。」
「!!?」
突然響き渡ってきた声にギョッとして振り返る二人。
後ろから犬の白バイ警官がまっすぐにこちらに向かってきます。
「お二匹さん、原付は二匹乗り禁止だよ。はい、免許証だして。」
「えっ?免許証?…いや、それは…」
慌てふためくボータ。
「貴様、もしかして無免許か!?」
「いや…あはは…」
「笑って誤魔化すな!とにかく二匹とも来てもらおうか。」
「待ってくれ。私は大事なレースの最中で…。無免許はこいつが勝手にやった事だから私には関係ないという事で手を打たんか?」
「ちょっとユアン様、それはあんまりなお言葉…」
「ジタバタしているんじゃねえ!二匹とも同罪なんだよ!」
問答無用で二匹を引っ立てていくドッグポリスマン。
「何故こんなところに突然ポリ公が現れるんだ~~~!」
「二匹乗りの原付を見たとのたれこみがあったんだよ。」
「いったい誰がそんな余計な事を!!」
ユアンは泣き叫びますが犬のおまわりさんは許してはくれず、二匹は待機していたパトカーに乗せられ連行されて行ってしまったのでした。
夕焼けの中、ゴールに姿を現したのはクラトスでした。
皆の声援の中、ラストスパートをかけてテープを切るクラトス。
「やったな。父さん、おめでとう!」
「有難う、ロイド。」
「やっぱり真面目が一番って事ですよね、クラトスさん。」
「うむ。……ところでユアンはどうしてしまったのかな?さっき声が聞こえたような気がしたのだが。」
ちらりと目を交わすロイドとコレット。
そう、警察へのたれこみは二匹がやった事なのでありました。
「気のせいじゃないの。どうせあいつの事だ。競争なんてバカらしくなってどこかへ遊びに行っちゃったに違いないよ。」
「そうですよ。それより祝勝パーティの用意が出来ているんです。行きましょう。」
「そうか?私の為にそんな事までしてもらって悪いな。」
こうしてクラトスは皆に祝福され、楽しいパーティは翌朝まで続いたのでした。
一方、ユアンとボータはと言えば…。
「出してくれ~~。」
「原付とはいえ、無免許は重大な犯罪だ。しかもノーヘルに二人乗りときた。今晩はそこでじっくりと反省するのだな。」
「すみませんでした。もう二度としませんから許して下さいよ~~。」
二匹の泣き声は、その夜一晩中留置場の中で響き渡っていたのでした。
めでたし、めでたし。(何がめでたいのか?)
−おわり−