リーガルの憂鬱 後日談
ここは、アルタミラのバー。二人の男が酒を飲んでいる。
ゼロスとリーガルであった。
「その後、会社の方はどうよ?」
「とりあえず、旧社屋に移してなんとかやっている。少し狭いが、新しいビルが出来るまで辛抱せねばなるまい。」
「すまなかったな。」
「お前は何もしていまい。」
「でもさ…ほら、一応天使様の保護者としてさ。」
リーガルはくすくすと笑った。
「クラトス殿が聞いたら怒り出しそうなセリフだな。」
「かもな。」
ゼロスも笑って、グラスの酒をあけた。
「あの時の事だけど…コレットちゃんはともかく、天使様には本当に悪気はなかったんだぜ。あの人はさ、その、何ていうか時代の流れに乗ってないっていうかさ。浮世離れしたとこがあるから、ちょっと他人とはずれちゃってるけど。それは、あの人が4000年前のものさしで物事を図っちゃってるっていうか…だから…」
しどろもどろになって懸命にクラトスを弁護しているゼロスを見て、リーガルは笑い出した。
「な、何だってーのよ。人が一所懸命に…」
「す、すまない。」
リーガルは何とか笑いを抑えると、言葉を続けた。
「お主も変わったと思ってな。以前のそなたなら、他人のために弁護するなんて事はしなかっただろう。」
ゼロスは注がれた酒を一口飲んだ。
「前は、他人の事なんてどーでも良かったからな。でも、俺様が変わったっていうなら、それは天使様のおかげだよ。あの人がいたから、今の俺がある。」
「それは、クラトス殿も同じではないかな。」
「天使様が?」
「クラトス殿は変わったよ。周りに張り巡らせていた壁のようなものがだんだんなくなってきた。感情が素直に表に出るようになってきて、よく笑うようにもなった。」
「…」
「それは全部そなたの影響ではないのかな?本音を言えば少し悔しい気もするがな。」
リーガルは微笑をうかべてゼロスを見た。
「わたしがやろうとして出来なかった事を、お前がこの短期間のうちにやってしまった…その事に嫉妬すらおぼえる。」
「おっさん?」
「フフ…私もクラトス殿には少しばかり興味があったからな。」
リーガルはふと入り口へと目を向けた。
「お前の天使様が迎えに来たようだぞ。」
ゼロスが振り向くとクラトスがこちらにやって来る所だった。
「ゼロス!探したのだぞ。こんな所で寄り道をしていたのか。」
クラトスは少々息を切らせていた。
「天使様?…どうして?」
「どうしてだと?今日はお前の誕生日であろう。料理を作って待っていたのだぞ。」
誕生日?そんなもんあったことすら忘れていた…
「リーガル殿が連絡をくれなければ待ちぼうけをくうところだった。」
呆然としているゼロスの背中をリーガルが叩いた。
「ほら、早く帰るといい。折角の料理が冷めてしまうぞ!」
そして、小声で囁いた。
「この間の事なら、怒ってはいない。クラトス殿がわざとやったのではない事ぐらい承知している…だから、心配するな。」
ゼロスは驚いたようにリーガルを見た。そして、笑顔を浮かべると礼を言ってクラトスと共に帰っていった。
一人残ったリーガルは、グラスを片手に呟いた。
「俺の天使様…か。私ももう少し若ければ、あのように素直に気持ちを伝えられたのだろうか?」
そして、グラスの酒を一気にあおる。
「フ…たとえそうしたとしても、振られたであろうな。クラトス殿が必要としているのは、私ではなくゼロスなのだから。」
あの二人は、お互いが相手を必要としているのだ。それは、二人が出会った時から始まっていたのだろう。
後から出てきた者が割り込む隙などないのだな…
その夜、リーガルは、もやもやとした思いを振り切るように、一人飲み明かしたのであった。
− リーガルの憂鬱 後日談 終 −
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