さすらいのリーガル
−その1−
私はリーガル。さすらいの旅人だ。
己の罪を清算するべく、過酷な旅を続けている。
おや、あんな所に女の子が蹲っているではないか。これは助けてやらねば!
困っている人に手を差し伸べ善行を積む事…これこそが贖罪への早道なのだから。
「どうしたのだ?子供よ。」
「……」
「どこか具合が悪いのか?なんなら私が病院へ連れて行ってやろう。」
「……」
相当具合が悪そうだ。
「よし、私におぶさりなさい。遠慮などせずともよい。この鍛え抜かれた肉体美、そなた一人おぶった所でびくともせんからな。」
笑顔で膝を折り、女の子を背負おうとするリーガル。
ところが…
「煩いわよ、おじさん。そんな所で気味の悪い笑顔を見せてないで向こうへ行ってくれないかな。邪魔しないでよ!!」
リーガルの手を振り払い睨みつけてくる女の子。
その声はか細く、囁くような声であった。
おお、こんなか細い声で…。
可哀そうに。苦しくて堪らぬのだろうな。それなのにあくまでも他人に迷惑をかけまいとするとは、なんと健気な…
「子供が遠慮などするものではない。手遅れにならぬ内に、ほら早く…」
リーガルが嫌がる女の子を尚も背負おうとしたその時、
「み〜つけたっ!!」
突然背後から聞こえてきた声に、不思議そうに振り返るリーガル。
そこには得意げな顔の男の子が立っていた。
「どうしてくれるのよ!おじさんの所為で見つかっちゃったじゃない!!折角見付からないように小声で話していたのに…」
「え…?」
「あたし達はかくれんぼをしていたの!か・く・れ・ん・ぼ!!」
「『かくれんぼ』とはなんぞや?」
「おじさん、かくれんぼも知らないの?隠れている人を鬼が探すのよ。見つかったら負けなの。」
な、なんと!この可愛い顔をした男の子が実は鬼だというのか!?
牙も角もないから気付かなかった…一生の不覚。
とすると、私が声をかけたがばかりにこの女の子が鬼に食われてしまうというのか?
いかんいかん!それだけは阻止せねば!!
「安心するが良い。このような鬼など、私にかかれば一発だ。そなたには指一本触れさせはせぬ。」
張り切るリーガルに首を傾げる女の子。
「食らえっ!爪竜連牙弾!!」
「!?…ギャ〜〜〜!!!」
リーガルの華麗なる蹴り技に男の子はあえなく撃沈した。
「フ…、勝負にならなかったな。」
決めのポーズをとった後、リーガルは(気味の悪い)微笑みを浮かべ女の子を見た。
「鬼は退治したからもう大丈夫だ。心安らかに家路に着くがいい。そなたの具合が悪いのでなくて何よりだった。ではな…」
そして満足気にその場から去って行くリーガル。
その背後では、
「キャ〜〜、太郎ちゃんしっかりして!誰か、誰か来て〜〜〜!!」
という女の子の悲鳴が響き渡っていた。
あの外見に騙され鬼と見抜けなかったとは、私もまだまだ修行が足りぬという事か…。
しかし、あの女の子を助ける事が出来てよかった。
フ…これで今日も一つ善行を積む事が出来たな。
だがこれで私の罪が償えたわけではない。
私はさすらいのリーガル。
贖罪が終わるその日まで、この過酷な旅は続くのだ。
−その1 終−