【注意!】
ありえない話です。
筆者が最近沈みがちな気分を盛り上げる為だけに書いたものですので、全体を通してふざけまくってます。
ですので、そういう話が嫌いな方はご覧にならないで下さい。
一応ゲームの筋通りに話が進んで参りますが、セリフは大幅に変えられておりますし、順番も前後していたりします。
そして、またまた長〜い話になってしまいました。
それでも許せるという方のみ、スクロールしてお進みください。
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それ行け!クラオヤジ
ロイド達を裏切り別行動をしていたクラトスは、その日シルヴァラントにいた。
エターナルソードを装備するのに必要な物を揃えるべく各地を回っていた彼であったが、ふとアンナの墓参りをしたくなり忙しさの合間を縫ってやってきたのだった。息子を裏切り気分的に沈んでいた所為もあったのかもしれないが、後から考えるとそれが大きな間違いだったのだ。
「いよお、あんたもしかしてコレットちゃんを護衛してた傭兵さんじゃねえのかい?」
ぼんやりとアンナの墓の前に佇んでいたクラトスは、いきなり後ろから声をかけられギクリとして振り返った。そこには満面に笑みを湛えたダイクが立っていた。両手に鞄、背には大きな風呂敷包みを背負っている。
(夜逃げかっ!?)
ダイクは、目を丸くしているクラトスに近付くとその肩をポンポンと親しげに叩いた。
「一人かい?ロイド達はどうしたい?」
「…訳あって今は別行動をしているのです。」
「ふーん、そうけえ。」
ダイクにとっては、その訳が何であれ、どうでもいい事のようだった。別段興味もなさそうにそう言うと後を続けた。
「丁度いい所で会った。それじゃあ今あんたは暇って事だよな?」
一応疑問形を用いているが、ダイクの言葉には『暇だろ?暇って言え!』との強制が含まれている。そう感じたもののクラトスは抵抗を試みた。実際暇ではなかったのだから仕方がない。
「生憎と目が回るような忙しさでしてね。これから直ぐに発たねばなりません。という訳ですのでこれにて失礼いたします。」
しかしダイクは、そのまま立ち去ろうとするクラトスの肩をむんずと掴み引き戻したのだった。
「暇なんだろう?」
声音は静かで顔も笑っている。だがその目はちっとも笑ってはいなかった。殺気さえもこもったその目の光に、クラトスはついに折れたのであった。
「……はい、暇です。」
途端に機嫌が良くなるダイク。
「実はこれから鍛冶屋仲間と慰安旅行に行くんだ。」
「旅行?(世界が大変だというこの時期に呑気に慰安旅行を?)」
「そこであんたには留守番を頼みたい。」
「いや留守番と言われても、私には鍛冶の仕事は出来な…」
「鍛冶といっても、普段の仕事は鍋底の修理とか包丁研ぎぐれえのもんだから、あんたにも出来るって。大丈夫、大丈夫。」
ダイクはワッハッハッと豪快に笑いながら再度クラトスの肩をバシバシと叩いた。
「あ、それと、くれぐれもロイドには俺が留守だって事を気付かれないようにしてくれや。前から、次の慰安旅行には絶対に自分も連れてけって騒いでてよ。それなのにまた一人で行った事を知ったら、あいつひがむだろ。だから内緒にしておきてえんだ。…あと、ロイドが帰ってきたら渡して欲しいもんがあるんだが。そこの箪笥にしまってあるから頼んだぜ。」
捲し立てるようにそう言うと、ダイクは、そんじゃあバスの時間があるからとクラトスの返事も聞かずにそそくさと出かけて行ってしまったのだった。
一人家に残されるクラトス。
「言いたい事だけ言って行ってしまった…。本当ならこんな所で留守番している暇などないのだが…」
しかし、なんといってもダイクにはロイドを育ててもらった恩がある。その恩は返さなければならない。
クラトスは大きな溜息をつくと、仕方なく留守番をする事にしたのであった。
それからしばらくの間、クラトスはぼんやりとテーブルの前に座っていた。
「ダイク殿はああ言っていたが、やはり鍛冶屋の仕事ばかりは私が代わりにという訳にはいかんだろう。客が来ないように外に注意書きを貼っておいた方がいいかもしれんな。」
クラトスは適当な紙を探し出すと、そこに、ダイクは留守である旨をしたため外に貼り出しに行こうとした。
するとその時、クラトスの研ぎ澄まされた天使の聴覚がロイド達の声を捉えたのだった。
「ロイド!?…まさかここへ来るのか?」
クラトスは慌てた。
まずい。実にまずい。私は今ロイドと敵対している身なのだ。
その敵である私がここにいるのはどう考えても変ではないか。
すぐに逃げ出そうとしたクラトスであったが、しかしその頭にダイクの言葉が浮かんで来た。
“くれぐれもロイドには俺が留守だって事を気付かれないようにしてくれや。”
「…私にどうしろと言うのだ?気付かれぬようにと言われても、そんな事は無理に決まっているではないか。」
ダイクの無理難題に、クラトスは途方に暮れてしまったのであった。
そんなクラトスの事情など知る由もなく、程なくしてロイド達が家に到着した。
バタンと勢いよく扉を開けて賑やかに入ってきたロイドは、家の中にいた『ダイク』の姿を認めると笑顔で声をかけてきた。
「親父、ただいま〜〜!」
「ロイドか…一体どうしたのだ?」
「うん、ペリットが手に入ったから親父にフィギュアを作ってもらおうと思ってさ。」
ニッコリと笑って、ペリットを差し出してくるロイド。
「そ、そうか…」
『ダイク』は引き攣った笑顔でそれを受け取った。
するとロイドの横にいたコレットが、『ダイク』を不思議そうに見上げて来た。
「あれ〜〜?ダイクさん、背が伸びた?」
(ギクッ…)
「ホントだ。服もつんつるてんだね。」
続いて覗きこんできたジーニアスも首を傾げる。
確かに今目の前にいる『ダイク』は、服こそいつも通りではあったが、上着は腹出し状態だし、ズボンは膝までしかなく半ズボンのようになっていた。
「ド、ドワーフは、十年に一度、体が変化するのだ。一時的なものですぐに元に戻るがな…」
「そんな事、初耳ね…」
ぼそりと呟いたリフィルの声に、再びギクリと身を震わせる『ダイク』。
すると…
「そうかい?俺様は聞いた事あるけどね〜。大学でドワーフについてのレポート書いた事があって、その時調べたんだ。」
ゼロスがニヤニヤと笑いながら口を挟んで来たのだった。
「でも…」
ゼロスの言葉に納得できない様子のリフィルは、なおも言葉を継ごうとしたのだが、それをリーガルが止めた。
「まあまあ、リフィル。納得できぬのは私とて同じではあるが、大学のレポートなら嘘を書きはしまい。それにドワーフであるダイク殿本人が言っているのだ。ここは認めざるを得ないのではないか?」
「……そうね。分かったわ。」
まだまだ不満そうではあったが、リフィルは渋々頷いたのであった。
ホッとしたように息をつく『ダイク』。
「それでは早速フィギュアを作るとしよう。少々時間がかかるから、皆は外で待っていてくれ。」
そう言って、皆を外へと追い出したのであった。
一人になった『ダイク』は、困惑したように窯で燃えたぎっている炎を見つめていた。
火だけはなんとか起こす事が出来た。しかし…
「一体、フィギュアとはどうやって作るのだ?」
そう、この『ダイク』、実はクラトスなのであった。
ロイド達がやってくるのを察知したクラトスは、かと言ってダイクとの約束があるからには逃げるわけにもいかず、散々慌てふためいた揚句にダイクに変装する事でこの場を乗り切ろうとしたのだった。ロイドをストーキングする為に用意した変装セットが役に立った。カツラを被り、つけ髯をして、眉にもゲジゲジ眉毛を張り付けた。服は本人のものを箪笥から拝借したのだが、背丈だけは変えようがない。結果つんつるてんになってしまった。
「全く、子供というものは鋭い所を突いてくるものだ…。危うくバレそうになってしまった。」
ブツブツと文句を言いながら、横に置いてあるペリットへと視線を向けるクラトス。
こんなものは4000年前にはなかった…。最近出来たものなのだろうか?無論作成方法など知る筈もない。
「まいったな…どうすればいいのやら…」
「ぼんやりしちゃってどうしたの?天使様。」
「ん?いや、どうやったらいいのか分からなくてな。」
突然に声をかけられ、反射的に答えてしまったクラトスは、ギョッとして振り返った。
「み…神子!?」
「やっぱ天使様だったんだ〜。」
「ど、どうして気付いた?」
「普通誰が見てもすぐに気付くと思うけどね。そんな細長いダイクさんがいるわけないっしょ?俺様からすると、気付かないロイド君達の方がよっぽど謎だね。」
「……そうか。」
「その言葉づかいも止めた方がいいぜ。もっとべらんめえ口調で話さないと。」
「べ…べらんめえって。(上品な私にはとてもじゃないが無理だ)……お前は気付いていながら何も言わずにフォローしてくれたと言うのか?」
「だってさ、大汗かいてやってるのを見たら可哀そうになっちゃってさ。ま、誰にも言わないから安心しなって。」
「大汗…」
「で、何に悩んでいたわけ?」
「いや、フィギュアの作成方法が分からんのだ。」
「こんなものは適当に放りこんでおけば出来るって。」
そう言いながらペリットを次々に火の中に投じて行くゼロス。
「!!…お、おい神子…」
「ほら、ちゃんと形になってきたっしょ?」
見ると、放り込まれたペリットは徐々に人形の形へと変化していた。
「…鍛冶屋の技術は関係ないのか?」
「要は気合じゃないの?出来上がった姿をイメージしながら、こんな形にな〜れ〜って念じればいいんだよ。」
「そういうものなのか…」
「そういうものだって!」
クラトスは首を傾げながらも、言われた通り必死に念じるのであった。
そして一時間後…
「よし、では取り出すぞ。」
ワクワクとした表情で戻って来たロイド達の前で、クラトスダイクは出来上がったフィギュアを窯から取りだして行く。
「ヘッヘヘ〜。何が出来てるかな?すげえ楽しみ!!」
次々に並べられて行くフィギュアを目を輝かせながら覗きこんでいるロイド達。
しかし、その顔がだんだんと曇って行く。
「これは…誰かね?」
しいなが取り上げたそれは、なんとも形容しがたい奇妙な物体であった。強いて例えるなら、やたら胸がデカイてるてる坊主とでも言えばいいのか…
「それは(恐らく)しいなだね。その胸見れば分かるっしょ。」
「!!!」
「これは誰かなあ…」
ジーニアスが取り上げた物は、どう見ても鬼太郎の目玉親父である。
「大きさから言ったらジーニアスじゃねえ?剣玉らしきものも持ってるし…」
「こ、こ、これが僕?」
他にもオランウータン風のリーガルや、金太郎のようなプレセア、ばいきんまんのようなコレット、ムンクの叫びのようなユアンが並んでいる。そんな中、何故かロイドとノイシュのフィギュアだけはマトモなのであった。
……天使様…あんた、一体何を念じていたわけ?
てか、天使様は皆の事をそんな風にイメージしていたの?
クラトスダイクはと見てみると、彼はすっかり固まってしまっている。
ゼロスは、クラトスには芸術的センスなど微塵もないのだという事を改めて認識したのであった。
「…ところでこれは誰なのかしら?」
一つのフィギュアを取り上げるリフィル。その声は静かではあったが、確かな怒りが込められていた。
その人形は例えるなら、頭がボサボサで口が裂けたヒョロ長いちびまる子ちゃん。ご丁寧に、頭には角、口には牙まで生えている。着ている服や杖を持っている所から、それが誰かは一目瞭然であった。
(い、言えない…・いくら俺様でもあれだけは説明出来ないよ。まだ死にたくないからね…)
「ねえ、ダイクさん。これは誰のフィギュアなのかしらね?」
不気味な笑みを浮かべ、クラトスダイクに近付いて行くリフィル。
「えっ?……い、いや…それは…」
クラトスダイクはゼロスに援護を求める視線を送った。それに対して何やらジェスチャーで答えるゼロス。
『ここは誤魔化すしかない!べらんめえ口調で切り抜けろ!!』
「な、なんでえなんでえ、てめえら!!俺の仕事にケチつけようってえのけえ!!」
決死の表情で叫んだクラトスダイクであったが、
「「「「「「こんなんじゃ、ケチつけたくもなるだろっ!!」」」」」」
ロイドとゼロスを除く全員による、怒りのユニゾンアタックによって撃沈させられたのであった。
それから数週間が過ぎた。
ダイクはまだ旅行から帰って来ておらず、クラトスは相変わらず『クラトスダイク』を続けていた。
本来、人は貼り紙というものを全く見ないものらしい。留守だと書いてあるのに毎日数人が訪ねてくる。その度にクラトスダイクは包丁を研ぎ、鍋の底にあいた穴を修理していた。
とはいえ、クラトスとて暇人ではない。今までユグドラシルには何度となく呼び出されたし、迷えるロイド達にも助言を与えに行かなくてはならなかった。この間など、ユアンに呼び出されたと思ったら父親である事を暴露された上に怪我まで負わされてしまった。結果、ユグドラシルに捕まってしまい、それでも何とか再び抜け出して来たのだった。
そのように命がけで抜け出して来た自分が、ここで、こんな姿で鍛冶屋をやっているとユグドラシルが知ったら、彼は一体どう思うだろう。きっと気が狂ったと思うに違いない。そう思われても仕方がないのだ。なにしろ当の本人が情けなさに泣きたくなっている程なのだから…。
そんな事を考えながら鍋底の修理をしていると、ガラス窓をコツコツ叩く者がいる。見ると、ゼロスが窓に張り付いてこちらを覗いていた。
「神子さんかい…今日は、いってえどうしたんでえ?」
この数週間で、クラトスの口調はすっかりダイク節と化してしまっていた。呆気にとられるゼロス。
「な、なんて言うか…すっかりなり切っちゃってるね、天使様。」
「うるせえぞ神子。おらあ、忙しいんでえ!用がねえならけえれっ!!」
「ちょ、ちょ、ちょっと待った〜〜、天使様!」
窓を閉めようとするクラトスを慌てて止めるゼロス。
「いよいよロイド君達が、デリスカーラーンに乗り込むんだよ!」
「なにっ!?」
ゼロスの報告に、クラトスダイクは目を見開いた。
「そりゃあ、てえへんだ!こうしちゃおられねえ。神子さんよ、後は頼んだぜ。打ち合わせ通りにな!」
ゼロスは、窓を乗り越え、すぐさま駆け付けようとするクラトスの腕を掴み引き戻した。
「天使様!その恰好で行く気なの?それはまずいっしょ。それにその口調…直した方がいいと思うよ。」
「お、おう、そうだったな…危うく大変な事になるところだった。」
クラトスはカツラや付け髯を放りだすと、羽を広げ今度こそ飛び立って行ったのだった。
そんなクラトスを溜息をつきながら見送ったゼロスは、開きっぱなしの窓からダイク家に入り込んだ。
「ったく…・こんな所に放り出して、もしロイド君に見つかったらどうすんのよ…」
ゼロスはブツブツと文句を言いながらカツラや付け髯をかき集めると、隅に置いてあったクラトスのカバンの中へ仕舞い始めた。
「あれ?これは……」
その最中、ある物を目にしたゼロスは、それをつまみ上げた。
「フフフ〜ン…もしかしたらこれは使えるかもね。」
ニヤリと笑ってそう呟くと、それを自分の荷物の中に押し込んだのだった。
場所は変わって、ここはオリジンの石碑の前。
クラトスとロイドが対峙していた。その後ろでは仲間達が固唾をのんで見守っている。
「…どうしてもやるのか。」
「今更何言ってやがんでえ。中途半端な覚悟じゃ死んじまうのがオチだぜ。」
「…へっ?」
ロイドは目を丸くした。
ゼロスのブロックサインに、ハッとするクラトス。
「い、いや…オリジンの封印が解きたければ私を倒すがいい。」
「???……と、とにかく…あんたが過去と決別するなら、それに引導を渡すのは息子である俺の役目だ!」
「ならば俺…・わ、私も本気で行かせてもらおう。」
少々調子が狂った様子であったが、なんとか決闘に入る二人。長い死闘の末、決着がついた。ガクリと膝をつくクラトス。そしてクラトスは封印を解放したのであった。
「オヤジ ―― !!」
崩れ落ちるクラトスに向かって思わず叫んでしまうロイド。
「……ロイド君…違うっしょ?」
「えっ?…いや、クラトスの口調を聞いていたらつい…・・じゃなくて、クラトス ―― ッ!!」
慌てて仕切り直して、ロイドはクラトスに駆け寄った。そこへユアンが現れ、クラトスは命を繋ぎとめたのだった。
「大丈夫だ。クラトスは生きている。」
「……また死にそこなっちまったけぇ…」
呟くクラトスに、顔を見合すロイドとユアン。
「……ま、まあ…死んじまったら終わりだからさ…死なないに越した事はないんじゃねえ?」
「…そうだな…そんな当たりめえの事を息子に教わるなんざ、こちとら一生の不覚だぜ。」
目を閉じるクラトス。
「ク、クラトス?」
「クラトスなら(たぶん)大丈夫だ。(頭を打って少々おかしくなっているようだが)命には別状ない。私がみているから、お前はオリジンと契約しろ。」
「本当に大丈夫なのかよ…」
「しつこいぞ。生きているのだからそれでいいだろうが!ほれっ、オリジンがまちくたびれているぞ。」
『資格なき者よ。いつまで待たせる気だ。こう見えて私は忙しいのだぞ。早くしないと認めてやらんぞ。』
「あ、ああ…」
まだクラトスの事が心配そうなロイドだったが、とりあえずオリジンと戦闘し、苦労の末に打ち勝ったのであった。
そこへミトスが登場。ロイドに乗り移ろうとするが、コレットに邪魔をされてしまう。
「くっそー、コレットを返せ!!」
「ハッハッハッ。返してやらないよ〜だ!」
「よさねえか、ミトス!!」
「???…クラトス?いつから江戸っ子になったの?…まあいいか。クラトスもおいでよ。粋なクラトスなら大歓迎だよ。」
「……」
「クラトスは結局僕の事なんか分かっていなかったんだね。」
泣きながらミトスが退場し、デリス・カーラーンがその姿を現したのであった。
「このままでは世界が滅びてしまうわ。」
「コレットもさらわれちゃったし…どうすんのさ、ロイド。」
「決まってる。ミトスを追うんだ!!」
「しかし…救いの塔は崩壊したのだぞ…」
「エターナルソードだ。おめえが真にオリジンと契約を交わしたってえならエターナルソードは必ずおめえに応える。その時間と空間とをあやつる強大な力で…。」
「しかしアルテスタはまだ起きあがれまい。契約の指輪は誰が作るのだ?」
(えっ?そうなのか?)
アルテスタ家前の事件の時、クラトスはさっさと気を失ってしまった為にその後の展開を知らなかったのだった。そんなクラトスに、ロイドが更に追い討ちをかける。
「…親父だ!」
「何っ!?」
思わず叫んでしまうクラトス。
「ああ、こうなったら親父にかけるしかない。」
(まずい…それは非常にまずいのだ、ロイド……)
「一体どうしたのだクラトス?さっきからお前、変だぞ。」
焦っているクラトスにユアンが小声で尋ねて来た。
「…いや…その…ダイク殿は今いねえのだ…」
「へ?」
「ロイドに内緒で旅行に出かけていて留守なのだ。」
「!!…そ、それはまずいではないか。」
「だから困っている…今更ロイドに言う訳にもいかんし…」
「仕方無いな…よし、私に任せろ。お前はどうにかして時間を稼ぐのだ。いいな?」
そう言って何処かへと飛び去っていくユアン。
一方、ロイド達は、すっかりダイクの所へ行く気になっていた。慌てるクラトス。
「よし、じゃあ直ぐに親父のトコへ向かおうぜ!」
「ま、待て!」
「ん?クラトス?なんだよ。」
「私も一緒に行かせてもらおう……だが、その前にどうやらまだエルフが取り残されているようだ。向こうの瓦礫の下から助けを求める長老の声が聞こえる。」
「え?だって、さっき長老は避難したはずでしょう。僕達ハーフエルフに助けられるのはどうとか文句をいいながらさ。」
「ちょ、長老も年だからな。足をもつれさせて転んだ所に瓦礫が崩れてきたようだ。」
「仕方ねえな。じゃあ、助けてやらないと…」
クラトスの指した瓦礫の元へと向かうロイド達。果たしてそこからは気を失った長老が発見されたのであった。それは、ユアンが去り際にタコ殴りにして放りこんでおいたものだった。もちろん時間稼ぎの為にである。
助け出された長老は、すぐにリフィルの回復魔法を受けたのだが、ショックでその時の記憶を失っていた。どうしてこんな所にいたのかも覚えていなかったのである。当然の事、ユアンに襲われた事も全く記憶に残っていなかった。こうしてユアンによる長老襲撃事件は闇に葬り去られたのであった。
ロイド達は長老の介抱を終えると、今度こそダイク家に向おうとした。だが、いつの間にやらクラトスが姿を消している。
「あれ?クラトスは?」
「ああ、天使様なら先に行ってるってさ。」
「先に?…なんだよ。自分で長老を見付けておいて助けもせずに行っちまったのかよ。」
「い、いや、なんか準備する事があるみたいよ…」
「準備?…まあいいか。とにかく早く向かおう。」
ロイド達は、レアバードを飛ばして、ダイク家へと急いだのであった。
こうしてダイク家に戻ってきたロイド達。
家の中に勢いよくなだれ込んできた彼等をクラトスダイクが迎えた。当然の事、そこにクラトスの姿はない。
「あれ?クラトスは?」
「えっ?…(ギクリッ)」
「先に来ているはずなんだけど。」
「お、おう、クラトスさんなら来たぜ。あの人から、何があったか大まかな事は聞いている。」
「で?クラトスはどこにいったんだ?」
「…ええと…帰っちまった…のかな?」
曖昧に微笑むクラトスダイク。すると…
「俺様ならここに居るぜ!!」
皆が振り返ると、そこにクラトス(らしき人物)が立っていた。すかしたポーズでニヤリとした笑みを浮かべ、騎士団時代の服を着ているのだが、それは少々だぼだぼで、たくさん付いているベルトも所々留められていなかった。
クラトスダイクには、それが『ゼロス』である事が一目で分かったのだが、どういう訳か今回もロイド達は気付かないようだ。
「父さん、少し痩せたようだけど大丈夫なのか?」
とロイドが心配そうに言えば、
「…痩せたっていうより縮んだって言った方がいいような?服の着方もだらしないし…」
とジーニアス。
「マナを放出すると体が縮むのかしら?性格や言葉遣いも少々変化したようだし…これは興味深い現象だわ。」
リフィルは爛々と目を輝かせている。
クラトスダイクは、慌ててゼロスクラトスの腕を掴むと隅へと連れて行った。
「神子!これはどういう事だ!?」
「ん?いやさ、天使様の荷物から天使様の髪と同じカツラを見付けたもんだから、何かの役に立つと思って借りておいたんだ。案の定、役にたったっしょ?服はデリスの天使様の部屋から拝借して来たよ。…どう?似合ってる?」
「お前は由緒ある騎士団を冒とくする気か。ちゃんとベルトを留めんか!」
パチパチとベルトを留めるクラトスダイク。
「仕方ないっしょ。複雑で着方が分からなかったんだから…」
「それに私はそんなにすかしてはおらん!」
「いや、十分すかしていると思うけど?」
「二人とも、何をこそこそやっているんだよ。」
「えっ?…い、いや、事情はクラトスさんから聞いたぜ。」
「その事はさっき聞いたよ。で?作ってくれるのかよ、親父。」
「あ、ああ…しかし俺は長い間の地上暮らしで、技術から遠ざかっていたからな…」
「技術を持ったドワーフは怪我で動けない。もう天使様しかいないんだ。」
「えっ?天使様?」
ゼロスクラトスの言葉に目を丸くするロイド。
「じゃなかった…ダイク殿しかいないのだ。」
クラトスダイクはゼロスクラトスを蹴とばすと、引き攣った笑みを浮かべた。
「ま、まあ…なんだ…ドワーフの誓い第11番『平和な世界が生まれるようにみんなで努力しよう』だからな。ここはひとつやってみようじゃねえか。同じ父親としてよ。」
「親父…それは誓い第1番だぜ。11番は『嘘つきは泥棒の始まり』だっただろ。」
「そ、そうだったかな。ハハ…俺とした事が間違えちまったぜ。と、とにかくこれから取りかかるからよ。おめえらは外に出ていてくんな。いいかい?仕事中はぜってえに覗いちゃなんねえぜ。」
「なんか、『鶴の恩返し』みたいだな…」
ぶつくさといいながら、追い出されるロイド達。
ゼロスと二人きりになると、クラトスは大きく溜息をついた。
「ところで天使様、契約の指輪なんて作れんの?(あのペリットを見た限りでは無理そうな気がするけど…)」
「俺に出来る訳がねえだろう。」
「あ、やっぱり…じゃあどうするのさ?」
「ユアンを待っている。奴が何とかしてくれると言ったのだ。」
とその時、噂をすればで、物凄い音を立ててユアンが煙突から落っこちてきた。彼はアルテスタを連れていた。
「親父〜、どうしたんだ?なんだか凄い音がしたけど…」
「な、なんでもねえ。気にするな!」
ロイドが外から尋ねてくる声に叫び返しながら、クラトスはユアンの方を振り返った。
「何てえトコから入って来るんでえ!」
「仕方なかろう。外にはロイド達がいるのだ。見付からずに入ってこれる所といったらここしかなかった。」
その横では、アルテスタがクラトスダイクの姿を見て唖然としている。
「もしかして…クラトス様で?」
「…アルテスタを連れて来たのか…」
「ダイクがいないのであれば、もうこいつにやってもらうしかあるまい。」
「一体全体、これはどういう事なのです。」
「おめえにはこれから契約の指輪を作ってもらう。」
「じょ、冗談じゃない!私は怪我人なんですよ!」
「それでもやって貰わなくっちゃならねえ。俺だって動かぬ体に鞭打ちながらやっているのだ。世界の為だ。あきらめな。」
「そんな御無体な!…きゃ〜〜〜〜」
クラトスは嫌がるアルテスタに、無理矢理ダイクの服を着せて行く。最後にカツラを頭に乗せると、
「よし、これで完璧でぇー。」
「ク、ク、クラトス様〜〜〜!」
クラトスはジャッジメント服に着替え、ゼロスも自分の服に戻っていた。
そしてクラトスは、未だ渋っているアルテスタに頭を下げた。
「無理を承知で、俺がこうして頭を下げて頼んでいるんだ。どうか聞き届けてくれねえか?もちろん、おめえだけに無理はさせねえよ。俺も手伝うからよ。世界が救えるかどうかはおめえの肩ひとつにかかってるんだ。」
「…分かりましたよ。やりゃあいいんでしょ。やりゃあ…」
「ありがとよ、アルテスタ。恩にきるぜ。…ああ、あと、今からおめえはダイク殿だからな。べらんめえ口調で話すようにしてくんねえ。」
「……努力致しましょう…」
「おうよ、頼んだぜ!」
「どうでもいいが、クラトス…お前はもう元に戻ったのだから、その話し方は止めたらどうだ。」
クラトスはユアンを見た。
「いやな、分かっちゃあいるんだが、癖になっちまってよ。どうにも止まらねえ。どうしたもんかねえ?」
「……もういい。好きにしろ。」
呆れたように肩をすくめるユアン。
こうしてアルテスタとクラトスは、契約の指輪に取り掛かり、どうにか作り上げる事が出来たのであった。
すぐにロイド達を呼び戻そうとしたクラトスであったが、ある事を思い出して箪笥に駆け寄った。
「そう言えば、ダイク殿がここにロイドに渡して欲しいものが置いてあると言っていたな…ついでに渡してしまおうか。」
呟きながら引出しをあけたクラトスは、中の物を見た途端、目を見開いた。
「これは!!……ダイク殿…あなたは…」
それから少しして、ロイド達が呼び戻された。そこにユアンがいるのを見てロイドは驚きの声を上げる。
「ユアン?…あんたいつの間にやって来たんだよ。」
「ん?ちょっと前にな…まあ、細かい事は気にするな。」
「…まあ、別にいいけどさ…」
すると、そこにいるアルテスタダイクを見たコレットが首を傾げた。
「あれ〜?ダイクさん、また背が縮んでる。今度は少し横に広がったみたいだね。」
コレットの言う通り、アルテスタにはダイクの服は少々幅が足りなかったようではち切れそうになっていた。
「本当だ…それに気のせいかな?親父の顔がアルテスタさんに似てきたような気がするんだけど…」
“おう、あたりきよ。俺はやるとなったら何でもなり切ってやるタチなんでえ。”
後ろでクラトスが囁く通りに、繰り返すアルテスタ。
「お、お、おう、あ、あたりきよ。お、俺はやるとなったら…何でもなり切ってやる…た、た、たちなんでえ!」
「すげえや。顔が似てくるまで、なり切っちゃうなんてさすが親父だな。改めてそんけ〜しちゃったよ。」
“へん、煽てたって何にもでねえぞ。そら、これが契約の指輪だ。持ってきな。”
(以下、クラトスの囁きは省略いたします)
「…へ、へん…煽てたって何にも出ねえぞ。そら、これが契約の指輪だ。持ってきな。」
「これが契約の指輪か…。これがあればエターナルソードを使えるんだな。」
「ロイド…これを使ってくれ。」
契約の指輪を眺めているロイドに、クラトスはフランヴェルジュを差し出した。
「クラトス…」
「契約の指輪を持った今のおめえなら、きっと使いこなせるこったろうよ。それでミトスを止めてくれ。」
「そりゃあ名剣だ。おめえが持っている剣とでは釣り合いがとれめえ。よしこれをおめえにやろう。おめえが一人前になった時に渡そうと俺が作っておいたもんだ。」
アルテスタダイクが差し出したそれは、ダイクがロイドに渡してくれと言って置いて行った剣だった。それを見付けた時、クラトスは、ダイクの心遣いに感謝し涙した。そして、自分の剣をロイドに渡す事を決意したのであった。
ロイドは二人から輝く二振りの剣を受け取った。
「すげえや。これがあればミトスだって怖くない。有難う、親父…父さん!」
そして、翌朝、ロイド達はデリスカーランに向けて旅立つ事となった。
クラトス、アルテスタダイク、そして何故かユアンが見送りに出てきていた。
「すまねえなロイド。おめえには最後まで責任を背負わせる事になっちまった。」
申し訳なさそうに目を伏せるクラトスに、ロイドは笑ってみせた。
「気にすんなよ。大丈夫、必ずコレットを取り戻し、そして世界を元の姿に戻して見せるから!」
「…頼んだぜ。」
「ああ!…それじゃあ、行ってくるな。親父……」
アルテスタダイクに向かってそう言ったロイドは、そこで言葉を切り、クラトスを見た。そのまましばらく迷っているようだったが、やがて笑顔を浮かべると、こう言ったのであった。
「行ってくるぜ!クラオヤジ!!」
「なっ…クラオヤジ!?」
「うん。俺さ、今回の事でクラトスの事がすごく身近に感じる事ができるようになったんだ。以前のクラトスだったら、父親だと分かってもたぶん近寄り難く思ってしまったかもしれない。でも、最近のクラトスは話し方が砕けてきたせいかな?ずっと前から一緒にいたみたいに自然に接する事が出来るんだ。すげー嬉しかった。」
「………」
「だからさ、父さんじゃなくって、クラオヤジって呼びたいんだ。…・駄目かな?」
クラトスは驚きの表情でロイドを見詰めていたが、程なくしてフッ…っと笑みを浮かべた。
「いや…構わねえよ。」
クラトスの答えに、ロイドは嬉しそうに微笑んだ。
「それじゃあ、行ってくるぜ!親父!…そしてクラオヤジ!!」
「ああ、気ぃ付けて行ってくるんだぜ!!」
明るく手を振りながら旅立って行く息子を、“クラオヤジ”はその姿が見えなくなるまでいつまでも見送っていたのだった。
それから少しして、世界は救われた。
人々は、世界の為に尽力した英雄達を称え、その活躍は後世まで語り継がれた。
しかし、その英雄達の陰で、“クラオヤジ”という人物の涙ぐましい努力があった事は誰にも知られていない。
−それ行け!クラオヤジ 終−
※ダイク節というよりも、単なる酔っ払い親父のような話し方になってしまいました…(汗)。というか、ダイクさんの話し方って未だよく分からないんです…。自分の中では江戸っ子ってイメージなんですけどね。それに、これって小説っていうより、単なるあらすじっぽいね…ただの実況中継のようになってしまいました。すみません…